研究課題/領域番号 |
19K05657
|
研究機関 | 神奈川大学 |
研究代表者 |
松本 太 神奈川大学, 工学部, 教授 (20318215)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 燃料電池 / 電極触媒 / 白金 / d-バンドセンタ / 担持体 / 遷移金属酸化物 |
研究実績の概要 |
燃料電池のアノード反応である酸素分子の還元反応は非常に遅く、燃料電池の性能に大きく関与している。酸素分子の還元反応を促進するための触媒の開発が必要となっている。白金触媒はこれまで最も性能が高い触媒であるが、それでも反応の促進が必要である。これまで様々な触媒が開発されているが、耐久性に問題があった。そこで本研究では、白金触媒を遷移金属酸化物上に担持させることにより、酸素分子の還元反応を促進させることを目的とした。昨年度の実験ではこのコンセプトにより、酸素分子の反応が大きく促進されることを明らかにした。本年の検討では、酸素分子の還元反応を促進する最も良い遷移金属酸化物の種類を明らかにした。さらに、なぜその遷移金属酸化物が最も良いのかを明らかにするために白金触媒の電子状態の指標としてd-バンドセンターの位置と触媒活性の関係を詳しく調べた。これらの触媒活性と白金のd-バンドセンターに位置の関係をプロットすると、火山型のプロットが見られ、つまり、d-バンドセンターの適切な位置で触媒活性が最大になることが明らかとなった。この傾向はこれまで白金と他の金属とで形成される白金系合金触媒において検討されていたが、本研究では様々な遷移金属酸化物担持体を変えることで見られることを明らかにした。透過電子顕微鏡を用いた分析により、白金の電子状態が遷移金属酸化物からの電子供与により変化していることを確認している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実績の概要において述べた内容をまとめて、現在、学術論文として投稿中である。1回目の査読が終了し、改訂原稿を再提出した状態である。
|
今後の研究の推進方策 |
白金系合金(PtX)を遷移金属酸化物に担持させた場合で、さらに電位サイクルを繰り返すことにより、X元素をPtX触媒から溶出させた触媒において、白金を遷移金属酸化物に担持した触媒より大きな触媒活性を示すことがわかってきた。PtXを遷移金属酸化物に担持させた場合の酸素触媒活性の最大活性を示すd-バンドセンターの位置が白金/遷移金属酸化物の場合と違ってきている。これらの違いを詳しく調べることにより、酸素分子の還元反応の促進を決める因子を明らかにすることができる。そのために計算科学的な検討を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため計画していた大型機器を用いた分析が行えなかったため。
|