反応性テンプレート粒成長法(Reactive-Templated Grain Growth,以下,RTGG法)は,テンプレート粒子を種結晶としたトポタクティック固相反応を用いるセラミックスの優れた結晶配向化手法の1つである.一方で,テンプレート粒子と目的物質の間の良好な格子整合性を前提としているため,適用できる物質が限られる.本研究は,この短所を克服するため,アパタイト型ランタンシリケート(以下,LSO)をモデル物質として,自己配向現象を適用した新しいRTGG法を開拓することを目的とする.昨年度までに反応性テンプレートを石英基板,組成補完粒子を基板上に化学溶液法で成膜した酸化ランタン薄膜に見立て,その熱処理によりc軸配向LSO結晶が生成することを明らかにしていた.今年度は,主として以下の2項目について調べた. (1) c軸配向LSO結晶のX線構造解析と高配向化因子の検討 c軸配向LSO薄膜の結晶方位解析をX線極点測定により行い,薄膜面内ではランダム配向であることを確認した.この結果は配向が自己配向によるものであることを示唆する.また,シェラーの式を用いて見積もったLSO結晶の結晶子径はc軸方向で50 nm程度であり,LSO結晶は基板との界面から表面にかけて結晶成長したものと考えられる.一方でc軸垂直方向では結晶子径は20 nm程度と見積もられた.さらに,熱処理のプロセス制御がc軸配向性を高める手段の1つであることを明らかにした. (2) バルクへの展開 RTGG法に倣い,板状粒子を含む石英ガラス粉末を原料としたシート成形を経てLSO焼結体を試作し,c軸配向性の出現を確認できた.プロセスパラメータを含めた基礎的検討を更に進めることにより,c軸高配向LSOセラミックスの実現が期待できる.
|