研究課題/領域番号 |
19K05662
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
草野 圭弘 岡山理科大学, 工学部, 教授 (40279039)
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研究分担者 |
福原 実 岡山理科大学, 工学部, 教授 (20150815)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | セラミックス / 備前焼 / 酸化鉄 / 微構造 / 紫蘇 |
研究実績の概要 |
備前焼の紫蘇色と称される茶系の色調は、薪を燃料として焼成した場合に現れることから、薪に含まれる成分が作品表面に付着し呈色すると考えられているが、その成分や呈色メカニズムは明らかにされていない。本研究は、紫蘇色の色調と微構造の関連および呈色メカニズムを解明し、登り窯の代わりに電気炉を用い、薪の代わりに試薬を用いて紫蘇色を再現するだけでなく、紫蘇色部に生成する結晶相を人工的に合成し、工業材料への応用を検討することを目的としている。 備前焼作家によると、紫蘇色と称される色調には、茶褐色系と赤紫色系などがあり、作家により定義が異なることがわかった。作家から提供された赤紫色の作品片の表面の生成相について、粉末エックス線回折により検討した結果、表面にはアルファ酸化鉄(Ⅲ)(ヘマタイト)およびMg-Al-Fe-O系のスピネル構造化合物が生成していることがわかった。これらが生成することより赤紫色になると考えられた。また、電子回折から、両相には結晶学的方位関係があることがわかった。 一方、備前焼作家から提供された茶褐色の作品片の表面について、透過型電子顕微鏡観察を行った結果、作品表面にも酸化鉄(Ⅲ)の生成が確認されたが、電子回折の結果、赤紫色部に生成するヘマタイトではなく、酸化鉄(Ⅲ)の多形の一つであるイプシロン酸化鉄(Ⅲ)が生成していることがわかった。イプシロン酸化鉄は茶褐色であるため、これが生成することにより茶褐色となると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験計画通り、おおむね順調に進展している。2019年度は、備前焼作家から提供された作品片の生成相を検討した。これまで、登り窯で焼成された際に現れる茶褐色系の色模様は、燃料として用いられる薪の成分が作品表面に付着し現れると考えられていた。しかし、提供された作品片の微構造観察の結果、炭素などの付着ではなく、酸化鉄(Ⅲ)が生成していることを明らかにした。 以上のことから、2019年度の目的はおおむね達成できたと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、作品表面に生成する酸化鉄(Ⅲ)の微構造について、電子顕微鏡観察により検討する。また、作家の協力を得て、登り窯での焼成条件を調査し、雰囲気制御できる電気炉を用いて茶褐色の再現を試みる。 2019年度の結果、作品表面に炭素などの付着は確認できなかったが、薪に含まれる成分と備前焼で用いられる粘土が化学反応していることは確かである。そこで、試薬を薪の代替物質として粘土とともに種々の条件下で焼成し、再現を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年3月18日から20日の間に予定されていた日本セラミックス協会2020年年会(明治大学)がコロナウィルスのため中止となり、予定していた旅費の支出が不要となった。2020年度の物品費として使用する。
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