研究課題/領域番号 |
19K05663
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
吉村 公男 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 先端機能材料研究部, 主幹研究員(定常) (40549672)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | パルスEUV / リソグラフィ / レジスト材料 / セラミック前駆体高分子 / 有機-無機転換 |
研究実績の概要 |
本研究は、焼成によって無機セラミックに転化する前駆体高分子を基本骨格とする、EUV用レジスト材料の合成と、パルスEUV照射により付与されるエネルギーを、前駆体高分子の架橋反応と焼成に利用する、新たなEUV用レジストプロセスの開発を目的としている。 本年度は、セラミック前駆体高分子として選定したポリカルボシラン(PCS)並びにアリルヒドリドポリカルボシラン(AHPCS)について、EUVや放射線照射によって起こる分解並びに架橋反応の調査および、放射線グラフト重合による化学修飾を行った。EUV露光装置内の環境を模擬した、真空中、室温でのPCS並びにAHPCSに対するガンマ線照射実験を行い、発生ガスは主に水素並びにメタンであること、そして、特定の溶剤で溶かした際の不溶分の割合を表すゲル分率が、約100%になるために必要な吸収線量を明らかにした。また、照射後のサンプルの熱重量分析から、架橋密度並びにセラミック収率を把握した。放射線グラフト重合による化学修飾においては、塗布性、架橋特性を改善するため、PCSに対する放射線グラフト重合を行った。ガンマ線を照射したPCSに対してエポキシ基を有するモノマーを反応させた結果、グラフト重合が進行し、グラフト化PCSの作製に成功した。これらの前駆体高分子をシリコンウェハー上にスピンコートしたサンプルに対して、電子線による全面露光並びに関西光科学研究所のパルスEUV照射を行った結果、照射部分に潜像を確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
セラミック前駆体高分子のPCS並びにAHPCSについて、分解による発生ガスは水素並びにメタンであり、プロセス上問題にならないこと、そして、パターンを形成するための架橋による固化に必要な吸収線量を明らかにできた。また、PCSに対する放射線グラフト重合に成功し、エポキシ基を有するポリマーを導入できた。そして、電子線による全面露光並びにパルスEUV照射実験では、照射部分に潜像を確認でき、設備として導入した真空対応位置決めステージにより、パルスEUV照射実験が効率的に行えるようになった。これらの結果から、年度計画はほぼ達成できたと考え、次年度以降に繋がる多くの知見が得られたため、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度得られた知見をもとに、研究の最終目的である新たなEUV用レジストプロセスの開発に向けて以下の検討を行う予定である。 ・ポリカルボシラン以外のセラミック前駆体高分子の検討と化学修飾。 ・全面露光条件での感度曲線の作成。現像並びに焼成条件の探索。 ・電子線描画装置、EUV露光装置、パルスEUVを用いたパターン形成と評価。 ・形成パターンのドライエッチング耐性の評価。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、パルスEUV照射のための設備、合成試薬、ガラス器具、試料評価用の消耗品について概ね予定通り支出したが、旅費や学会参加登録費用の支出が無かったことと、海外生産品のセラミック前駆体高分子の調達が遅れ、全体としては約50万円の繰越が生じた。 次年度は、セラミック前駆体高分子の調達の目途がついたため、繰越分を速やかに支出する。そして、合成のための試薬、ガラス器具、試料評価用の消耗品について引き続き支出する。旅費の繰越分については、増加が見込まれるEUV照射実験のための旅費交通費に充てる。その他、得られた研究成果を国内外の学会で発表する旅費や学会参加登録費用について支出する。
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