膜蒸留(MD)は疎水性多孔質膜を介して両側の蒸気圧差を駆動力とする膜プロセスである。工場の廃熱などを利用すれば非常に低コストで脱塩が可能である。一般にMDでは多孔質なポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜が用いられる。他方、布繊維を高温炭素化処理した炭素化繊維膜の開発が進められており、その高い疎水性と多孔性が注目を浴びている。本研究ではPVDF膜と炭素化繊維膜について膜蒸留測定を行い、膜の組成や構造が膜蒸留性能に与える影響を考察した。他方、随伴水は原油採掘時に生成する油分と塩分を含む廃水であるり、低コストで処理可能な方法の開発が望まれている。多孔質PVDF膜に親水性のポリビニルアルコール(PVA)膜を被覆した複合膜も作製し、MD実験を通してその性能を調査した。 炭素化繊維膜は布繊維を高温処理して得た。PVDF膜は非溶媒相分離法を用いて作製した。PVA膜は凍結法を用いて作製し、乾燥したPVDF膜に重ねて乾燥させることでPVDF/PVA複合膜とした。膜蒸留測定では3 wt% NaCl単独水溶液と、それに1000 ppmの油分を含む模擬随伴水溶液を使用した。溶液を約60℃に加温し、ポンプを用いて膜上を循環させた。膜を透過した液体中の NaCl 濃度は電気伝導度計を、油分濃度は油分濃度計を用いて測定した。 いずれのMD実験においても、透過液量と経過時間の間に線形関係が確認された。この傾きから透過流束を求めた。炭素化繊維膜の透過流束はPVDF膜より2割ほど大きかった。PVDF/PVA複合膜の透過流束はPVDF膜よりも低かった。脱油率は PVDF膜の44%に対し複合膜は95%であり、脱塩率はPVDF膜の95%に対し複合膜は99%であった。これらはそれぞれPVA層によって油分を首尾よく除去できたことと、PVDF膜が油分によって汚染されたことが原因と考えられる。
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