研究課題/領域番号 |
19K05671
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
伊藤 正人 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (20293037)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 水系ポストリチウム電池 / 有機電極 / マルチレドックス / 自己組織化 / ボウル型窒化炭素 |
研究実績の概要 |
電極候補物質として取り上げる新規トルキセノン誘導体のうち、含窒素誘導体を標的とした合成研究を行い、着脱可能な置換基により良好な溶解性を示す合成中間体の探索とその調製法の評価を行った。その結果、5位あるいは6位にメトキシ基をもつインダノンの環化三量化反応によって調製されるトルキセン類の、周辺部の官能基変換が円滑に進行し、新奇な長鎖アルコキシ基をもつトルキセン類が効率よく得られることが判った。また、このようにして得られた長鎖アルコキシ含有トルキセン類、なかでもトリス(オクチルオキシ)トルキセンは、既知のトルキセン類と異なり、溶解する有機溶媒に大きな制約をもたないことが判った。この特異な溶解性がフルオレン部位の酸化的変換反応を格段に効率化し、対応するトルキセノンやトルキセノンオキシムを収率よく与えることも明らかとなった。なおこれらの化合物群の調製は他の方法では著しく効率が低下する。これまでに比較検討した他の方法とは、長鎖アルコキシ含有インダノンの環化三量化や、長鎖アルコキシ含有アリール亜鉛反応剤とトリハロゲノベンゼンとのクロスカップリングを鍵とする方法などである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
電極活物質として提案するボウル型窒化炭素は基本的な合成反応の組み合わせで調製可能と期待されるものの、溶解性に関して制約の大きな合成中間体を経るために、これまで実現に至っていないものと考えられる。しかしながら、この点を劇的に改善し本研究の目的に資する新たな合成中間体をズバリ予想するのは容易ではなく、実際に一つ一つ調製して溶解性を調べながら進むより他に方法がないため非常に時間がかかった。
|
今後の研究の推進方策 |
長鎖アルコキシ含有トルキセノンオキシムをスケールアップ調製し、その脱水反応によって新たな窒化炭素C27N3を導き、その基礎物性と湾曲型π共役系との関係を明らかにする。また周辺部の長鎖アルコキシ基の官能基変換により水酸基をもつ誘導体を導き、その自己組織化の可能性を調査する。これらの電気化学特性を、平面型π共役系をもつ類似化合物のそれと比較し、湾曲型π共役系の特長を明らかにする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
テクニカルスタッフの人件費の総額がぴったりにならなかったので、次年度の物品費として使用する。
|