研究課題/領域番号 |
19K05673
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鯉沼 陸央 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工学系), 准教授 (70284742)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 酸化グラフェン / プロトン伝導 / 酸素官能基 / 電気化学キャパシタ / 水の透過 |
研究実績の概要 |
酸化グラフェン(Graphene Oxide, GO)は、表面に存在する酸素官能基、特にエポキシ基とカルボキシル基により、非常に高いプロトン伝導性を有していることを、これまでに我々は報告している。しかし、その非常に高いプロトン伝導のメカニズムと酸素官能基の関係については分からないことが多い。 そこで、様々な酸素官能基を有した酸化グラフェンのイオンおよび水の浸透現象を評価することにより、プロトン伝導のメカニズムを検討した。一般的な酸化グラフェンの作製方法であるHummers法で作成したGOには、酸素官能基として、エポキシ基のみならず、ヒドロキシル基とカルボキシル基が存在していたが、発煙硝酸を用いるBrodie法で作製した場合、エポキシ基のみが酸素官能基として存在することがわかった。しかし、Brodie法で作製したGOは、容易には剥離できず、ナノシート化することは困難であったが、カチオン系のエチルアミン溶液中で処理することにより、酸化状態をほとんど変化させず、ナノシート化することができることを見い出した。ナノシート化することは、フレキシブルで安定な薄膜を作製することには非常に重要なことである。 Hummers法で作製したGOとBrodie法で作製したGOを厚さ10μmの薄膜を作製し、水およびアルカリ金属イオンの透過実験を行ったところ、ヒドロキシル基、カルボキシル基が存在するHummers法GOの方が水をより選択的に透過することが分かった。これは、これまでプロトン伝導で有効な役割を果たしていると考えられてきたエポキシ基だけでは、水の透過、ひいては、プロトン伝導が効率的に起こらないことを示唆している。 以上の得られた知見から、今後、更なる高いプロトン伝導度をもつ酸化グラフェンを作製を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化グラフェンの酸素官能基とプロトン伝導(水の透過)の関係について、2種類の酸素官能基の異なる酸化グラフェン膜の水の透過現象を検討することによって、新たな知見を得ることができ、1報の査読付き論文として公表することができた。 酸化グラフェンのプロトン伝導はエポキシ基が酸素官能基として重要な役割を果たしていると考えれてきたが、カルボキシル基が水の輸送に関して非常に重要であることが示唆された。よって、エポキシ基は、水を酸化グラフェンの層間に整然と並ばせる役割を果たし、プロトン伝導で重要な水が、カルボキシル基の存在が不可欠であることがわかった。 今後は、この水の透過現象で得られた知見をもとに、更なる高性能な酸化グラフェンおよび高い電気伝導を有する還元酸化グラフェン(Reduced Graphene Oxide, rGO)を用いた電気化学二重層キャパシタ(EDLC)の開発を目指す。さらに、酸化グラフェン表面への金属酸化物の担持効果についても検討する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目的を完遂するために、比較的順調に進んでいるので、申請時の計画通りに進める予定である。 作製した酸化グラフェンデバイスの電気二重層キャパシタの評価および作製した酸化グラフェン膜の金属酸化物の担持効果の評価を中心に実験を進めていく予定であるが、1年目で、酸化グラフェン膜が、水を選択的に透過する(すなわち脱塩作用が高い)ことを見出すことができたので、当初のプロトン伝導を用いたキャパシタの評価だけでなく、透過膜としての性能評価も実施していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
金額が約2.5万円とそれほど多くないので、備品費として利用する
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