アンモニア水溶液を剥離剤として利用することによって、単一官能基(エポキシ基)だけを有する酸化グラフェンの単層のナノシートの作製に成功した。このエポキシ基だけをもつ酸化グラフェンの構造はかなり広い領域(数100ナノメートルスケール)で均一性を持っていることがわかった。 様々な手法で還元を行ったところ、酸化グラフェンの一般的な還元方法である熱還元や紫外光照射での熱還元では、エポキシ基の還元に伴い、ヒドロキシ基とカルボキシ基が生成され、Hummers法などから作製される酸化グラフェン還元過程とほぼ同じであった。一方、電気化学的に還元すると、エポキシ基の量だけが減少し、他の酸化官能基が生成しないことを見出した。 また、エポキシ基だけの酸化グラフェンで作製した自立膜は、ほぼ絶縁性を示し、一般的な酸化グラフェン膜で観察されるプロトン伝導がほとんど起こらなかった。しかしながら、アルカリ金属イオンや陰イオンは、膜内に浸透し、透過することができることが分かった。 以前の研究で、酸化グラフェンのプロトン伝導は、エポキシ基によって層間で整列した水分子が大きな役割を果たしていると報告したが、今回作製したエポキシ基だけでは酸化グラフェンの層間への水分子の取り込みが起こらず、プロトン伝導が有効に起こらなかったものと考えられる。しかしながら、アルカリ金属イオンや陰イオンはエポキシ基だけの膜内にも侵入できることから、プロトン以外のイオン伝導膜として期待できるものと考えている
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