研究実績の概要 |
今年度は、酸化チタン電極の改良が、水の酸化反応にどのような影響を及ぼすのかに関する検討を行った。基盤となるFTO電極上に従来よりも、酸化チタン粉末の量を2倍塗布した酸化チタン電極を用いた。その結果、Ge-ポルフィリン錯体の吸着量はこれまでの約2倍に増加した。本電極を用いての過酸化水素生成反応は、短絡光電流は増加するものの、過酸化水素の生成量は低下することがわかった。これは、酸化チタンの量が増加したことによって、生成した過酸化水素の吸着頻度が高まったため、バルクへの流出が認められず、過剰のGe-ポルフィリンによって酸化分解を受けたと推測された。研究期間全体を通して、以下のことを見いだすことに成功した。 ・Ge以外の典型元素であるリン(P)ポルフィリン錯体において、塩基性条件下でも酸化チタンへの吸着性が低下しないボロン酸基を持つ錯体の合成に成功し、水の過酸化水素への光二電子酸化反応が進行し、塩基条件下では、過酸化水素生成に対するファラデー効率を90%にすることができた。 ・半導体電極として酸化チタン以外に酸化タングステンが利用できることを明らかにした。また、水の酸化反応の反応場として、平滑な半導体ナノシートの作成にも成功した。 ・ポルフィリン以外の配位子として、ポルフィリ環の1つのピロール環が反転したN-混乱ポルフィリン化合物に着目し、新規Ge-N-混乱ポルフィリン錯体の合成に成功し、本錯体が水の酸化触媒として機能することを見いだした。 ・触媒活性の耐久性を向上させることができる粘土ナノシート反応場上でのGe, P, Snを中心とする典型元素ポルフィリンの光電子移動反応を構築することができた。 以上のことより、水の酸化反応のみならず、典型元素ポルフィリン錯体の広範囲な光機能性に関する知見を得ることに成功した。
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