研究課題/領域番号 |
19K05680
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研究機関 | 桐蔭横浜大学 |
研究代表者 |
池上 和志 桐蔭横浜大学, 医用工学部, 准教授 (30375414)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペロブスカイト / X線 / 放射線検出 |
研究実績の概要 |
本研究は、ヨウ化鉛系ペロブスカイト化合物であるヨウ化鉛メチルアンモニウム(MAPbI3)をはじめとする化合物群を、ガンマ線またはX線を検出する素子の受光部として用いるための材料選定、素子作製、ならびに素子の特性評価を行うことを目的としている。 太陽電池用の光吸収素子として広く用いられているMAPbI3の単結晶を、昇温再結晶法により作製した。3mm角程度の単結晶は、DMSOを溶媒として、100℃で一晩放置することで得られた。その後、この結晶粉末を、ダイスにセットし、熱プレス機によって荷重をかけることで、直径7mm厚み1mmのペレット状に成形した。作製したペレットの表面のSEM観察、ならびに、XRDの測定結果より組成を分析した結果、ペレットは微結晶が押し固められた外観であり、また一部が、PbI2に変化していることがわかった。このことは、ペレットの密度の実測値と、MAPbI3とPbI2の密度より計算された組成比の計算結果からも支持された。 上記のペレットを用いた電極を用いて、ガンマ線照射下で10Vのバイアス電圧を印加しながら電流値を測定したところ、ガンマ線の照射強度によって電流値が変化する様子が間観測された。しかし、安定して測定するには至らなかった。 そこで、MAPbI3にかえて、CsPbI3のペレット作製を検討した。CsPbI3は、市販のものを用いた。MAPbI3の場合と同様に、CsPbI3のペレットを、ダイスと熱プレス機によって作製した。荷重、時間、温度のパラメータを変えながら、作製を行ったところ、1mm厚のペレットであっても、透過率の変化を目視でも確認することができた。条件によっては、文字が書かれた紙の上にペレットを置いて、下の字を判読することができた。このペレットを用いて電極を作製し、予備的な実験により、X線に対して感度を持つことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数のペロブスカイト化合物の中から、X線に感度があり、かつ、熱プレス機により電極成型が可能なCsPbI3を選択することができた。また、放射線検出素子としての特性を、ペレットの透過率、表面粗さ等のパラメータで評価できる可能性を見出したことで、放射線に対する感度の高いペレットの作製条件について、研究方針を立てやすい状況となった。
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今後の研究の推進方策 |
無機系ペロブスカイトであるCsPbI3を、試薬メーカ―より購入し、それを用いて放射線に感度のある1mm厚のペレットを作製することに成功した。厚みは放射線を吸収できること、ならびに、感度S/N比の向上のためにも重要である。予備的な測定より明らかとなった放射線検出素子としての問題点は、ペレットの品質が電圧印加時の暗電流の大きさにも大きく影響することである。CsPbI3のペレットは、1mmの厚みであっても、熱プレス条件によって、透過率が高くなり、さらに、透過率と表面粗さにも相関がみられた。透過率の高さはペレット内部のペロブスカイト結晶の欠陥の少なさにも関係していると予測されるため、今後は、バイアス電圧印加時の暗電流特性と、透過率と表面粗さの関係について調査を進める。さらに、品質の高いCsPbI3ペレットを作製するために、再結晶法などにより自前でのペレット成形に用いる結晶粉末の精製を試みる。 ペレットの作製では、結晶をメノウ乳鉢ですりつぶすなど、熱プレス前の前処理の方法についても、検討を進める。 放射線検出の実験については、公設試験研究機関などで実施ができるよう準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
ペロブスカイト素子の暗電流特性を測定するための装置の導入が年度後半にずれ込み、測定に必要な測定治具等の設計が終わらなかったため。 今年度は、測定用電極作製に必要な治具等を年度当初から導入し、実験を進める計画である。
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