研究実績の概要 |
本申請では、本研究室で新規に開発した「脱炭酸-尿素法」を用いて合成したNO3-型Zn(II)-Al(III)系層状複水酸化物(LDH)を固体電解質とした全固体アルカリ形燃料電池(AFC)の開発とその耐久性について評価する。本法は炭酸型LDHの合成に一般的に用いられてきた尿素法を改良したものであり、既にNO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHの単相合成に成功している。また、同LDHは現在までの研究で最大約20 mS cm-1と現状、世界トップクラスの非常に高いイオン伝導度を実現している。本申請の究極の目的は、NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHのイオン伝導機構について明らかにし、更なる高イオン伝導性を有する固体電解質の開発と次世代型全固体AFC実用化への指針を得ることにある。 本申請で解決・確立すべき課題は①NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHを電解質とした全固体AFCの開発、および②NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHのイオン伝導機構の解明と高イオン伝導化である。 ①についてはLDHを電解質としたAFCの開発課題としてi) 空気中に含まれる微量のCO2を由来とする炭酸イオン(CO32-)とLDH層間アニオンのイオン交換によるイオン伝導度の低下、および ii) カソード極で進行する酸素還元反応で生成する水酸化物イオン(OH-)の局所定なpH上昇によるLDH電解質の劣化(溶解) 、iii) 高温発電特性が挙げられる。 このようなLDH特有の劣化モードと高温での発電性能について明らかにする。 ②については水酸化物ホスト層を構成するカチオン種(2価: Co, Ni, Mg, Fe, etc., 3価: Cr, Ga, In, etc.) の影響について検討を行い、LDHのイオン伝導機構について明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
①NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHを電解質として用いた全固体アルカリ形燃料電池の開発 上記i)CO2ガス雰囲気中におけるLDHの安定性について評価した結果、液相条件下ではCO32-のイオン交換が進行し、CO32-型LDHが生成することがわかったが、気相蒸気雰囲気下ではどう反応は進行せずイオン伝導度の顕著な低下がみれれなかった。一方、ii)についてはLDHのpHに対する耐久性について、モデル実験を行い検討した。具体的には各pHへ調製したアルカリ水溶液中にLDHサンプルを浸漬し、その溶解度を調べた。その結果、pH=10以上でAlの組成費が減少し、OH型LDHの生成やZnOなどが生成するすることがわかった。iii)高温発電特性については最終年度に単セル試験を実施する予定である。 一方、②NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHのイオン伝導機構の解明と高イオン伝導化として、 本年度は水酸化物ホスト層を構成するカチオン種(2価: Co, Ni, Mg, Fe, etc., 3価: Cr, Ga, In, etc.) について合成を試みた。その結果、2価金属として、Co、Ni系においてM-AlLDHの合成に成功した。これらのカチオン種について、CO32-、NO3-、Cl-、SO32-アニオンがインターカレーションしたLDHのワンバッチ合成に成功した。これらのイオン伝導度を評価したところZn2+系LDH同様NO3-アニオンをインターカレーションしたLDHのイオン伝導度が他のアニオンと比較して著しく高いイオン伝導度を示し、最大で18mS/cm程度となった。このように、カチオン種およびアニオン種の影響を合わせて考察することで、Zn(II)-Al(III)系LDHのイオン伝導機構について明らかにしていく。
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