• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2020 年度 実施状況報告書

新規高イオン伝導性層状複水酸化物を電解質とした次世代型全固体AFCの開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K05682
研究機関奈良工業高等専門学校

研究代表者

山田 裕久  奈良工業高等専門学校, 物質化学工学科, 准教授 (90469073)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード層状複水酸化物 / 固体電解質 / AFC
研究実績の概要

本申請では、本研究室で新規に開発した「脱炭酸-尿素法」を用いて合成したNO3-型Zn(II)-Al(III)系層状複水酸化物(LDH)を固体電解質とした全固体アルカリ形燃料電池(AFC)の開発とその耐久性について評価する。本法は炭酸型LDHの合成に一般的に用いられてきた尿素法を改良したものであり、既にNO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHの単相合成に成功している。また、同LDHは現在までの研究で最大約20 mS cm-1と現状、世界トップクラスの非常に高いイオン伝導度を実現している。本申請の究極の目的は、NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHのイオン伝導機構について明らかにし、更なる高イオン伝導性を有する固体電解質の開発と次世代型全固体AFC実用化への指針を得ることにある。
本申請で解決・確立すべき課題は①NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHを電解質とした全固体AFCの開発、および②NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHのイオン伝導機構の解明と高イオン伝導化である。
①についてはLDHを電解質としたAFCの開発課題としてi) 空気中に含まれる微量のCO2を由来とする炭酸イオン(CO32-)とLDH層間アニオンのイオン交換によるイオン伝導度の低下、および ii) カソード極で進行する酸素還元反応で生成する水酸化物イオン(OH-)の局所定なpH上昇によるLDH電解質の劣化(溶解) 、iii) 高温発電特性が挙げられる。
このようなLDH特有の劣化モードと高温での発電性能について明らかにする。
②については水酸化物ホスト層を構成するカチオン種(2価: Co, Ni, Mg, Fe, etc., 3価: Cr, Ga, In, etc.) の影響について検討を行い、LDHのイオン伝導機構について明らかにする。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

①NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHを電解質として用いた全固体アルカリ形燃料電池の開発
として、i) 空気中に含まれる微量のCO2を由来とする炭酸イオン(CO32-)とLDH層間アニオンのイオン交換によるイオン伝導度の低下、および ii) カソード極で進行する酸素還元反応で生成する水酸化物イオン(OH-)の局所定なpH上昇によるLDH電解質の劣化(溶解)についてモデル実験を行った結果については昨年度に報告した。iii)高温発電特性については最終年度に単セル試験を実施する予定である。一方で、単セル測定を試みているが、良好な発電特性の取得には至っていない。LDHは他の酸化物のようにペレットを焼結し、ガスバリア性を高めることができないため、その成型方法について検討を重ねている。
一方、②NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHのイオン伝導機構の解明と高イオン伝導化として、水酸化物ホスト層を構成する3価カチオン種としてGaを用いた際には、2価金属として、Co、NiにおいてGa系LDHがCO32-、NO3-、Cl-、SO32-アニオンをインターカラントとしてワンバッチ合成できることを報告した。R.2年度は本法では合成が不可能であったMg2価カチオンを用いたNO3-型Mg-Al LDHのワンバッチ合成法について検討した。その結果、尿素やカチオン種の濃度を変化させることで合成可能であることが分かった。得られたNO3-型Mg-AlLDHはこれまでのNO3-型LDHと同様に十数mSレベルの非常に高いイオン伝導度を示していた。Mgが2価金属として利用可能となったことで、水素あるいは水素よりも卑な電位を酸化還元電位を有する金属についても還元されないため、AFCに限らず空気電池としての用途へも広げられる可能性もある。

今後の研究の推進方策

本申請で解決・確立すべき課題は①NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHを電解質とした全固体AFCの開発、および②NO3-型Zn(II)-Al(III)系LDHのイオン伝導機構の解明と高イオン伝導化である。これらの課題に内、②については種々検討が終わり、カチオン種によるイオン伝導度の差はみられるものの、アニオン種による影響の方が強く、特にNO3-アニオンをインターカラントとして用いることでイオン伝導度が飛躍的に向上することを見出している。一方で、NO3-アニオンがOH-イオン伝導機構に及ぼす影響については解明するに至っていない。そこで、来年度も継続してイオン電導機構について検討していく。
また、①の課題で試行する燃料電池の単セル測定に向けて、その発電手法を確立し、評価を行っていく予定である。これまでに、LDHペレットを用いたLDH電解質用単セルの開発は実施済みであるが、良好な発電特性の取得には至っていない。LDHは他の酸化物のようにペレットを焼結し、ガスバリア性を高めることができないため、その成型方法について検討を重ねている。最終年度は、LDH粉体にポリマーバインダーを用いて成型などを試行していく予定である。これまでに、モデル試験により、LDHのAFC用電解質としての耐久性やCO2被毒耐性は見当がついているため、一刻も早い緻密でガスバリア性の高い形成法の確立が必要である。単セル発電手法の確立は①-iii)で示した高温発電特性を測るうえでも非常に重要である。
以上の知見を総合的に検討しながら、イオン伝導機構を検討しながら、AFC電解質としての可能性について評価していく。また、単セル試験により、AFC作動時のセル内で進行する現象についても調査する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] 電解沈降LDH薄膜の合成とイオン伝導度の評価2020

    • 著者名/発表者名
      森下華寿美 , 山田裕久 , 宇賀正紘 , 前田和樹 , 片倉勝己
    • 学会等名
      電気化学会第88回大会
  • [学会発表] 薄膜層状複水酸化物固体電解質の三価金属カチオン種がイオン伝導度に及ぼす影響2020

    • 著者名/発表者名
      森下華寿美, 山田裕久, 宇賀正紘, 前田和樹, 片倉勝己
    • 学会等名
      第30回日本MRS年次大会
  • [学会発表] AFC用層状複水酸化物固体電解質の合成2020

    • 著者名/発表者名
      森下華寿美, 山田裕久, 谷口雄介, 前田和樹, 酒井智香子, 片倉勝己
    • 学会等名
      第9回JACI/GSCシンポジウム

URL: 

公開日: 2021-12-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi