研究課題/領域番号 |
19K05685
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研究機関 | 地方独立行政法人大阪産業技術研究所 |
研究代表者 |
山本 真理 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 主任研究員 (20416332)
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研究分担者 |
加藤 敦隆 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 研究員 (40826161)
高橋 雅也 地方独立行政法人大阪産業技術研究所, 森之宮センター, 総括研究員 (90416363)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | シリコン / 多孔質 / 全固体電池 / 硫化物系固体電解質 / 負極 |
研究実績の概要 |
硫化物系固体電解質を用いた全固体電池は、高い安全性・高出力等が期待され、電気自動車用の大型蓄電池の最有力候補である。充電1回でガソリン車並みの航続距離を達成するための高容量負極の開発、及び電池を大型化するための電池拘束圧の低減が求められる。しかし、高容量負極であるシリコンの大きな体積変化に起因した低拘束圧下でのサイクル劣化、及び急速充電によるデンドライト析出など課題が多い。本研究は、硫化物系全固体電池に適した形態として、空隙による応力緩和で拘束圧の低減が期待でき、Li拡散・電子伝導経路が連続する多孔質シリコン膜を創製することを目的とした。 本年度は、多孔質シリコン膜との比較データを取得することを目的に、多孔質ではないマイクロサイズのシリコン粒子を用いた負極複合体膜における拘束圧の影響を調査した。 負極複合体膜は、シリコン、硫化物系固体電解質SE、導電助剤、バインダを60:40:10:6の重量比で混合したスラリーをカーボンコート銅箔に塗布、乾燥して作製した。負極複合体膜をSEに重ねて、対極にLi-In箔を張り付けて拘束圧50MPa、又は75MPaのハーフセルを作製した。初回放電容量は、拘束圧75MPaでは3355mAh g-1、50MPaでは2270 mAh g-1となり、高拘束圧で高容量を示した。初期3サイクルのクーロン効率は、75MPaで95%、50MPaで92%であり、高拘束圧で高い容量維持率を示した。450サイクルまでの長期サイクル試験において、いずれの拘束圧においても初期20サイクルで大きな容量低下が見られたが、50MPaの方がより低下が激しかった。また、75MPaの方が高容量を維持しており、450サイクル目で1630 mAh g-1、容量維持率49%となった。以上より、マイクルサイズのシリコンでは、シリコンの体積変化によるシリコン/固体電解質界面の剥離を防止するために高拘束圧が必要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今後、多孔質シリコン膜の拘束圧の影響を調査するうえでの比較データを取得できた。バルクシリコンでは初期サイクル劣化が激しいこと、高拘束圧が必要であることが示され、多孔質シリコン膜の有用性が期待される結果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
多孔質シリコン膜の作製において、1. 貴金属ナノ粒子を触媒としたMacEtch法、及び2. シリカ多孔体膜のマグネシウム熱還元法の2種類を検討する。1では、スパッタ膜、又は溶射膜を基材に用いて、MacEtch法で垂直細孔を形成する。2では、銅箔上に電解析出法等で作製した多孔質シリカ膜のマグネシウム熱還元により多孔質シリコン膜を作製する。得られた膜の微細構造を調べるため断面および表面のFE-SEM観察や細孔分布測定を行う。また、ラマン分光分析や粉末X線回折によりSiの同定を行う。得られたシリコン電極を硫化物系全固体電池の負極に用いて、充放電測定やインピーダンス測定により性能評価を行う。多孔質シリコン膜は、シリコン粉末を用いた電極複合体と比較して、連続体であることから低拘束圧でも良好な充放電特性や急速充放電が期待できる。そこで、拘束圧を変化させてサイクル試験、およびレート試験を行い、低拘束圧および急速充放電を実現する多孔質シリコン膜の形態を抽出し、形態の改良を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験方法を変更したため、当初使用を予定していた装置の必要性がなくなったため。
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