研究課題
Si負極の充放電に伴う体積変化で、周囲のSEや導電助剤と乖離し、イオン・電子伝導経路が切断されることで充放電サイクル劣化が進行する。Siをファイバー状にすることにより、SEや導電助剤との接触を一部でも維持できればSi内部はイオン・電子伝導経路が接続するためサイクル安定性が向上すると考えた。多孔質Siナノファイバー、及び比較としてSi粒子(Φ5 μm)を用いて全固体電池を作製し、充放電サイクル数によるSi/SE界面抵抗の変化を交流インピーダンス測定により評価した。初回と比較した50サイクル目のSi/SE界面抵抗は、Si粒子は5倍に増加したのに対し、多孔質Siナノファイバーは2倍の増加となった。このことから、多孔質SiナノファイバーではSi粒子と比べてSEとの接触界面が維持されやすいことが示された。いずれの電池においてもSE層のバルク及び界面抵抗はサイクル数を経るにつれて増加しており、Siの体積変化による応力に起因してSE層内で亀裂が生じた可能性が示唆された。Siの形状による影響を明らかにするため電池微細構造を断面SEM観察により調査した。Si粒子では1サイクル充電後に負極層とSE層の界面やSE層内に水平に亀裂が生じた。50サイクル充電後ではSE層内の水平方向の亀裂が増加した。またSi粒子の周囲に亀裂が形成されていた。これはSi粒子が膨張し周囲のSEを塑性変形させた後、Siが収縮する際にSEが追随できず隙間が生じたと考えられる。一方、多孔質Siナノファイバーでは初回充電後には亀裂がなく、50サイクル充電後に負極層/SE層の界面に水平に亀裂が存在していたが、負極層内にはクラックがなかった。負極層内のEDXマッピングから、Siファイバー同士が結着してネットワークを形成し、イオン・電子伝導経路が構築され孤立しにくい構造となったことが明らかになった。
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Electrochemistry Communications
巻: 138 ページ: 107288~107288
10.1016/j.elecom.2022.107288
Journal of The Electrochemical Society
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10.1149/1945-7111/ac81f6