研究課題/領域番号 |
19K05691
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松浦 顕教 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (50836096)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | BiFC / GFP nanobody / 複合体精製 / タンパク質翻訳後修飾 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
タンパク質の機能は、細胞内外の刺激に応じてユビキチン化などの多様な翻訳後修飾により臨機応変に制御される。本研究では、私たちが以前に開発したBiFC/GFP-Trapシステムを応用し、個々のタンパク質修飾の検証および機能解析を簡便・高精度に行える技術“BiFC/GFP-Trapユビキチン化解析システム”の開発に取り組むことを目的としている。 本研究では、タンパク質相互作用検出法であるBiFC(Bimolecular Fluorescence Complementation)に頻用されている蛍光タンパク質Venusを用い、N末端側(Venus-N)とC末端側(Venus-C)に分割し、ユビキチン結合プローブのTUBEと標的タンパク質に付加した。これによりBiFCシグナルとしてユビキチン化を検出し、そしてユビキチン化修飾体をGFP-Trapによって単離・精製することを試みる。ユビキチン化のモデル標的タンパク質として、IkappaBalphaとp53を用いた。BiFCにおいては、Venusの分割体を付加した2分子が近接した際に蛍光タンパク質構造を効率よく再構築する最適な組み合わせを見つける必要がある。そのため、Venus-N、Venus-CをTUBEまたはモデル標的タンパク質(IkappaBalphaまたはp53)のN末端側またはC末端側それぞれに付加した場合の組み合わせを試した。IkappaBalphaのユビキチン化増加刺激、またはp53のユビキチン化阻害剤処理を行ったところ、いくつかのBiFCの組み合わせにおいて、蛍光シグナルを示す細胞の割合が期待通りに変化することを確認した。一方で、BiFCの蛍光シグナルには細胞間でのシグナル強度のばらつきが見られ、今後の課題である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度中に、申請時の所属である金沢大学医薬保健研究域から京都大学ウイルス・再生医科学研究所への所属変更があった。着任した研究室での研究環境の立ち上げに時間を要したため、ユビキチン化修飾体の単離とその複合体の解析までには進めていないが、本解析システムに使用するBiFCコンストラクトの作製および修飾体の検出条件の検討などについては概ね計画通りに進行している。現在までにモデル標的タンパク質を用い、ユビキチン化を示すBiFC蛍光シグナルを検出することに成功しており、当初予定した1年目における目的はほぼ達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究経過において、期待されるBiFCの蛍光シグナルの変化が見られたものの、細胞間のシグナルのばらつきが想定されるよりも多く見られた。これらの実験で用いた一過性トランスフェクション法では、細胞間の発現量のばらつきは避けられず、蛍光シグナルの強弱がモデル標的タンパク質のユビキチン化をどの程度正確に評価できているか、今後検証する必要がある。より正確な評価のためには、TetOnなどの誘導発現系を用いた安定発現細胞を構築し、一定の発現量が確保された条件を用いる必要があると考えている。 今後は、期待されるBiFCの蛍光シグナルの変化が見られた条件において細胞溶解液を調製し、GFP-Trapによって再構成されたBiFCペアとして、ユビキチン化が生じたモデル標的タンパク質の精製を試みる。非ユビキチン化体は含まず、ユビキチン化体のみの精製が確認できれば、そのユビキチン化修飾体に含まれる相互作用タンパク質の解析に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
本解析システムに使用する発現コンストラクトの作製において、金沢大学在籍時の研究室が保有していた試薬類が使用可能であった。必要に応じて適宜試薬を購入したため、当初の予定よりも使用額が少なく、未使用額が生じた。 研究計画自体は概ね順調に進行しており、未使用額も含め、当初の予定通りに研究計画を進めていく。
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