研究課題/領域番号 |
19K05694
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
岡島 俊英 大阪大学, 産業科学研究所, 准教授 (10247968)
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研究分担者 |
村川 武志 大阪医科大学, 医学部, 助教 (90445990)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 結晶構造解析 / 翻訳後修飾 / ゆらぎ / 補酵素 / 酵素 |
研究実績の概要 |
本研究は、Arthrobacter globiformis由来銅含有アミン酸化酵素(AGAO)の自己触媒的な補酵素トパキノン(TPQ)の生成反応を対象として、酵素触媒反応に果たす金属イオンの役割の一端を詳細に解明することを目的とする。これまでにTPQ形成反応においてligand-metal charge transfer(LMCT)中間体が、AGAOの分子表面の2つのCys残基の変異(C315S, C636S)によって活性中心のTyr382と銅イオンとの間に形成されることが判明した。これら変異の効果はこれまで不明であったが、AGAOの詳細な構造解析と生化学的な解析によって、野生型酵素ではCys315とCys636がS-S結合しており、変異によって、そのS-S結合が形成されていないことがわかった。それによってCys636を含むC末10残基のコンフォメーションが大きく変化していることがわかった。さらに、分子内部にあるCys317-Cys343間のジスルフィド結合が少なくとも部分的に切断されていることが判明した。このような構造変化は分子全体のゆらぎを大きく変化させ、それにより活性中心のコンフォメーション変化が遅くなることでAGAOのTPQ形成の際の反応速度の変化に寄与する可能性がある。その結果、野生型酵素では蓄積することのないLMCT中間体を観測できるようになった可能性を現在考えている。このほかにもTPQ形成機構におけるアポ型酵素のプロトン化状態の重要性を解析するため、AGAOのZn結合型アポ酵素の高分解能中性子回折データの収集にも成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各種の構造データに加え、生化学的解析によって、予定通りの成果を得ているため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続きLMCT中間体形成機構の解明を進める。加えて、活性中心を大きく改変した新規酸化酵素の創生に着手する。また、量子化学的な検討も実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ感染症の蔓延による休業期間があり、想定よりも物品費と旅費の使用額が少なくなった。次年度に物品費と旅費として予算を使用し、研究の推進をはかる予定である。
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