研究実績の概要 |
本研究は、Arthrobacter globiformis由来銅含有アミン酸化酵素(AGAO)の自己触媒的な補酵素トパキノン(TPQ)の生成反応を対象として、酵素触媒反応に果たす金属イオンの役割の一端を詳細に解明することを目的とする。TPQ形成反応の初期に、TPQ前駆体Tyr残基において作り出されるligand-metal charge transfer(LMCT)中間体状態を、別なリガンドに対して引き起こすべく、活性中心を再構成した変異型酵素を作り出した。新規な活性中心構造を作り出すべく重要な分子基盤となった。また、分子全体のゆらぎの変化を引き起こすAGAOの分子表面の2つのCys残基(C315S, C636S)について、C315A変異型酵素などを用いて詳細に解析した結果、Cys315とCys636がS-S結合を破壊すると、636位を含むC末端領域が屈曲せず、βシートの一部として分子表面に結合していることが判明した。分子内部のCys317-Cys343間のジスルフィド結合の部分的な切断は、タンパク質のフォールディング時の分子内ジスルフィド結合形成に、Cys315とCys636(あるいはそのS-S結合)との交換反応が寄与していることに起因することも推測された。最終的に新たな酸化反応性を作り出す上でも有益な情報となった。このほかにも前年度から継続していたAGAOのZn結合型アポ酵素の高分解能中性子回折データの解析を完結した。前駆体Tyr残基(Tyr384)の側鎖のプロトン化状態を決定し、TPQ形成機構におけるプロトン化状態とゆらぎの重要性を理解するために、重要な知見を得た。
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