研究課題
天然ではタンパク質をはじめとする生体分子が自己集合し、ナノスケールの分子複合体が自発的に形成している。近年、天然の分子複合体のようなユニークな機能を有する分子を人工的に創るため、アミノ酸デザインや化学的手法などを用いた分子複合体の構築法が国内外で磨かれている。本研究では、申請者がこれまで取り組んできた、単量体タンパク質の部分構造が分子間で交換して多量化するドメインスワッピングについての知見を基盤とし、金属イオンや熱などによるタンパク質の多量体形成制御を目的とする。令和3年度は、ミオグロビン変異体のドメインスワップ二量体をさらに熱安定化させるための分子設計機構を検討するため、ドメインスワッピングにおけるヒンジ領域のアミノ酸残基と相互作用している周辺のアミノ酸残基を対象に変異導入を行い、その構造と熱安定性について調べた。その結果、アミノ酸配列的にはヒンジ領域と離れたC末端側に位置する疎水性残基のLeu137をGluまたはAspに変異させると二量体構造がより安定化されることが明らかとなった。X線結晶構造解析および分子動力学シミュレーションにより、L137E変異体やL137D変異体では、親水性の高くなることでヒンジ領域周辺の水素結合ネットワークがより緊密になり、二量体構造の安定化が起こっていると考えられた。また、ミオグロビン二量体の時分割分光法を用いた解析を行い、ヒンジ領域に変異導入をした安定なドメインスワップ二量体では、ヘムへのリガンド結合の協同性があることが示唆されたことから、二量体の安定化を通じた協同性をもつ機能性分子の構築についても検討中である。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件)
RSC Advances
巻: 11 ページ: 37604~37611
10.1039/d1ra06888a