研究課題/領域番号 |
19K05696
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
真板 宣夫 徳島大学, 先端酵素学研究所(次世代), 准教授 (00404046)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 結晶構造解析 / ナノマテリアル |
研究実績の概要 |
R1ENの結晶格子はP321であり、二回対称軸と三回対称軸が存在する。この対称軸の相互作用面に存在する残基をシステインに置換し、ジスルフィド結合によって安定な2量体、3量体R1ENを作製する。さらに拡張してR1ENとR1EN‐融合タンパク質のヘテロ2量体/3量体を精製することでR1EN結晶格子内に配置させることのできるタンパク質の分子量を大きくすることを目指している。 これまでに二回対称面にあるAla73をCysに置換した変異体で、溶液中で弱い酸化条件下で2量体を形成することが確認できている(Maita, JACS, 2018)。 今回新たに3量体の形成を行うため、三回対称軸に2か所(Gly147&Gly164)にシステイン変異を入れたものをデザインした。これを様々なタンパク質の融合コンストラクトを作製し、発現・精製を行ったが、どれも発現が極めて低い上に、ほとんどが不溶画分に行ってしまった。これはグリシンをシステインに置換したためグリシンの高い自由度が制限され、おそらく翻訳直後に正しくフォールディングされなかったと考えられる。そこで次にLeuとValをシステインに置換したものを作ったところ、野生体に比べて発現量は半減したが可溶画分に回収された。 3量体の調整方法は、一旦R1ENの結晶を作った上で、還元剤や酸化剤を添加してジスルフィド結合を作らせ、再び結晶を溶解してゲルろ過で精製することを計画している。この前段階として、結晶にどれ位の還元剤や酸化剤を加えれば良いのかを調べるために、Ala73Cysの結晶を用いてジチオスレイトール(DTT)、ペルオキソ二硫酸アンモニウム(APS)の様々な濃度の結晶化溶液に浸けて回折データを取得した。その結果、5 mM DTTによってCys73のジスルフィド結合は完全に切れることが確認できたが、APSによる架橋促進は確認できなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
R1EN結晶中の3回軸領域にシステイン残基の変異を入れて3量体を作成することを試みたが、初めにデザインした変異体が大腸菌での発現がほとんど見られなかった。結局別の位置に変異を導入することで発現の低い問題は解決したが、解決方法を培養条件や宿主大腸菌を変えることに拘ったため時間がかかってしまった。変異させる箇所を考える際に立体構造障害のみを重視して、フォールディングにおけるグリシンの効果になかなか思い至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
進捗が遅れていることから今後は対象タンパク質を絞って研究を行う。構造が未知のものについては2種類まで絞り、構造既知のものをメインに行う。構造が既知のものはリンカーの長さを予めデザインしやすいことに加え、結合する配列を用いて効率よく空隙内で固定化させることも可能である。具体的には、N末端にSumoやUbiquitinなどを融合し、C末端にはそれらに特異的な相互作用のある短いペプチドを導入し、結晶構造解析を行う。この方法はR1EN-融合タンパク法で複合体構造を解析する際の重要なストラテジーとなると期待される。 前年までにR1EN3量体のトラブルも見通しが立ち、今後は多くのタンパク質融合体でこの手法の効果を調べていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
三量体のコンストラクト作成に時間がかかり、予定していた実験が出来なかったため、差額が生じた。 令和2年度は異動したため繰越金を含めた助成金で試薬と実験器具を新たに購入し、実験環境を整えるのに使用する予定である。
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