研究課題/領域番号 |
19K05696
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
真板 宣夫 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 上席研究員(任常) (00404046)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 構造生物学 / 多孔性配位高分子 |
研究実績の概要 |
R1ENの結晶格子はP321であり、二回対称軸と三回対称軸が存在する。この対称軸の相互作用面に存在する残基をシステインに置換し、ジスルフィド結合によって安定な二量体、三量体R1ENを作製し、さらに拡張してR1ENとR1EN‐融合タンパク質のヘテロ二量体/三量体を精製することでR1EN結晶格子内に配置させることのできるタンパク質の分子量を大きくすることを目指している。これまでに二回対称面にあるAla73をCysに置換した変異体で、溶液中で弱い酸化条件下で二量体を形成することが確認できている(Maita, JACS, 2018)。 研究計画では前年度までの結果に基づき、L137C/V146Cの変異体で三量体R1ENを作る予定であった。しかしながら4月に現所属に異動後すぐにロックダウンとなり、8月まで実験が出来なかった。実験が出来るようになってから、GFP/Themis/KLF5の三種類の三量体コンストラクトを作製した。タンパク質の培養と精製の環境が12月に整備され、現在コンストラクトの発現まで確認した。 結晶作成については、野生体を小スケールで発現・精製を行ったが収量が十分でなく、また結晶化の再現が取れなかった。しかしながら、令和3年4月に結晶を作ることに成功し、これから融合タンパク質の結晶化を進めていく予定である。 その他テーマは異なるが、TMPRSS13細胞外ドメインの構造解析の論文を執筆・投稿し、Life Science Allianceに採択された。TMPRSS13はA型インフルエンザウィルスのヘマグルチニンを切断して活性化するほか、TMPRSS2と同様にSARS-CoV-2のスパイクタンパク質を活性化するプロテアーゼである。TMPRSS2の構造が未解明であるため、相同性の高いTMPRSS13の構造を鋳型にしてホモロジーモデルを作り、構造特異性について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
令和2年4月に放射線医学総合研究所に異動になると同時に新型コロナウィルス拡大により首都圏がロックダウンされるという事態に遭遇した。リモートワークにより遺伝子組換実験等の承認などの手続きが遅れ、実験開始までの準備に時間がかかった。またロックダウンに際して旧職場である徳島大学が首都圏からの来訪に2週間待機措置を行いったため、それが7月に解除されるまで前所属から必要な試薬や機器を現研究所に輸送することが出来なかった。その後もチューブ・チップ等必要な試薬・器具が入手困難な状態が続き、計画通りに進捗することは困難であった。 令和2年12月に必要な機器が納入されて、ようやく実験が進められるようになった。
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今後の研究の推進方策 |
1.空隙内でタンパク質を特異的に固定させる手法 R1EN融合蛋白質法での結晶構造解析の一番のボトルネックは、融合させた蛋白質がきちんと空隙内で特異的に固定されるか否かである。構造解析が成功したユビキチンの場合においても、偶然ユビキチンとR1ENのN末のIDR領域が相互作用することにより達成された。当初の計画では融合蛋白質が固定されるための技術開発も予定していたが、進捗が遅れて時間的に余裕がなくなってきた。それらを鑑みて、固定化させる技術についてはC末端にSumo、N末端にSIM(Sumo-Interacting motif)を融合させたもの、およびC末端にUbiquitin、N末端にUIM(Sumo-Interacting motif)を融合させたものに絞って結晶構造解析が可能か検討を行う。 2.R1ENとR1EN‐融合タンパク質のヘテロ二量体/三量体の作製 GFP/Themis/KLF5をそれぞれ融合させたR1ENの精製を行い、続いてヘテロ二量体/三量体の精製・結晶化を行う。 以上の得られた結果をまとめて論文投稿する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ拡大によるロックダウンの影響で異動先での実験開始が遅れたこと、国際貨物の停止による輸入品の不足、さらにPCRの拡大による生化学研究用試薬・物品の在庫不足などにより、物品が常に品薄で購入できなかった。また、ロックダウンにより実験が出来ない、学会のオンライン開催による交通費の影響もあった。 結晶化・精製に必要な試薬類を購入するほか、小型インキュベータを購入する。投稿論文の際に英文校正を行い、OAのための掲載料を支出する。また令和三年度にもロックダウンが行われて実験が進められない場合には、期間延長も視野に入れる。
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