前年度では三回対称軸上でジスルフィド結合をさせる変異体L137C/V146Cを作って結晶化を試みたが、結晶は得られなかった。当該年度は結晶化条件を再考し、再現性は低いものの、WTについては結晶が得られるようになった。R1ENの2D結晶の作製を目指して、R1ENの二回対称軸と三回対称軸両方にシステイン残基を入れた変異体(A73C/L137C/V146C)を新たに作成して、結晶化を試みた。変異体はWTと比べて発現量と結晶化の再現性が低く、難航したがデータ取得可能な大きさの結晶を得ることが出来た。放射光施設(PhotonFactory)で回折データを取得し電子密度を計算したが、L137C/V146Cは架橋されておらず、変異も入っていないように見えた。コンストラクトの配列を再確認して、配列に間違いがなかったが今後原因を明らかにして再度結晶化を試みる予定である。 R1ENwt自体の結晶化の再現性が悪い点を改善するため結晶化条件の最適化を試みた。これまでの結果から結晶化にはpHが極めてセンシティブなパラメータであることが分かっていた。また結晶化条件は酢酸ナトリウムが主成分であり、酢酸の蒸発によって容易に溶液のpHが変化してしまうことから、もっとpH変化に安定な緩衝液に置換することにした。一方で、結晶構造中に酢酸分子が結合しているのがみられているため、酢酸を適当量入れることが必要と考えられた。そのため、トリスバッファーのpH調整する際に塩酸ではなく酢酸でpH7-8の溶液を作って結晶化を試みた。R1ENwtの微結晶によるシーディングでトリスバッファーの条件で細長い結晶が得られたが、外形上は六角柱ではなく、きわめて小さいものであった。この結晶を放射光施設(PhotonFactory)でX線照射し回折データ取得を試みたが、結晶が小さいため空間群を判定するのに十分な回折点が得られなかった。
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