研究課題/領域番号 |
19K05702
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研究機関 | 大阪薬科大学 |
研究代表者 |
浦田 秀仁 大阪薬科大学, 薬学部, 教授 (80211085)
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研究分担者 |
斯波 真理子 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (70271575)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 核酸医薬 / siRNA / プロドラッグ型核酸 / 還元環境応答型 / ホモ接合体家族性高コレステロール血症 / Apolipoprotein B |
研究実績の概要 |
本年度はまず、ホモ接合体家族性高コレステロール血症 (FH)の治療標的となるApoB mRNAを標的とする未修飾ApoB-siRNAを合成し、ヒト肝がん由来細胞であるHuH-7細胞を用いin vitroでの評価系を確立した。siRNAの導入法としてはin vivoでの効果との相関性が高いと報告されているCEM (Ca2+ enrichment of medium) 法を採用し、当初siRNAの導入をCEM法で行った際の再現性の低さが問題となったが、CEMの調製法を改良することで克服できた。 次に、ApoB-siRNAを化学修飾するにあたり、上述のREDUCT修飾は現時点の技術では21merのRNA中、4~5残基の修飾が限界であるため試行錯誤的な修飾位置の選択より、適切な修飾位置を実験的に明らかにした上でREDUCT修飾ApoB-siRNA (ApoB-REDUCT siRNA) を合理的にデザインする戦略を採ることにした。つまり、従来型の非プロドラッグ型修飾でsiRNA活性が低下しない部位は従来型の修飾を、非プロドラッグ型修飾でsiRNA活性が低下する部位にはプロドラッグ型REDUCT修飾を用いる設計法である。 1)そこでまず、従来型非プロドラッグ型修飾として汎用されている2'-O-methyl修飾で部分的に修飾した16種類のApoB-siRNAを網羅的に合成し、それぞれを上述のin vitroの評価系で評価し、従来型修飾でsiRNA活性が低下する3つの領域をほぼ確定することに成功している。 2)さらに、血漿中のヌクレアーゼにより分解を受けやすい(化学修飾が必要な)箇所を同定するために、未修飾のApoB-siRNAのヒト及びマウス血清中での分解物の同定実験を並行して進めている。本結果から、化学修飾が必要な箇所が明らかにでき、1)の結果から従来型修飾とREDUCT修飾の使い分けが可能になり、合理的なApoB-REDUCT siRNAの設計が可能になると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ヒト肝癌由来HuH-7細胞を用いて、化学合成した未修飾ApoB-siRNAをCEM法によりトランスフェクションし、in vitroでのApoB遺伝子発現抑制活性の評価法を確立したが、当初siRNAのトランスフェクションをCEM法で行った際のApoB遺伝子発現抑制活性の再現性が低く、その改善検討が必要となった。現在は、CEMの調製法を改良することで十分な再現性を得ることができている。 また、「研究実績の概要」で記載したように、本研究の遂行にREDUCT修飾ApoB-siRNAを合理的にデザインする戦略を採用することとしたため、従来型の非プロドラッグ型2'-O-methyl修飾を異なる部位に網羅的に施したsiRNA群を合成し、2'-O-methyl修飾がsiRNA活性を低下させる領域を同定した。また、ApoB-siRNAのヒト及びマウス血清中での分解物を同定し、血漿中のヌクレアーゼにより分解を受けやすい部位を同定することで、化学修飾が必要な箇所を明らかにする。その上で、これらの情報をもと従来型の非プロドラッグ型修飾でsiRNA活性が低下しない部位は従来型の修飾を、非プロドラッグ型修飾でsiRNA活性が低下する部位にはプロドラッグ型REDUCT修飾を用いてApoB-REDUCT siRNAを設計する戦略に方針転換したため予定より半年程度の遅れが生じている。しかし、この戦略で設計することで、in vivo実験の開始以降は修飾部位の変更などの試行錯誤は不要になり、むしろ今後の研究の効率化に繋がると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、ApoB-siRNAのヒト及びマウス血清中のヌクレアーゼにより分解を受けやすい部位を同定し、早期にApoB-REDUCT siRNAの設計および化学合成を終えるよう進めていく。このApoB-REDUCT siRNAはin vitroでのsiRNA活性評価を行い、未修飾ApoB-siRNAや2'-O-methyl修飾siRNAとの活性比較を行うとともに、血清中での安定性評価を行う。また、このApoB-REDUCT siRNA は、LDL受容体ノックアウトマウス(FH病態モデルマウス) を用いたin vivo実験に供するため、量的にも比較的大量に合成する必要がある。合成が完了すればin vivo実験を開始する。 In vivo実験では、FH病態モデルマウスにApoB-REDUCT siRNAを投与し、肝細胞中のApoB発現量をqPCR (mRNAレベル) やウエスタンブロット(タンパク質レベル) により測定し、FH治療薬としてのApoB-REDUCT siRNAの有効性を評価する。 また、蛍光標識ApoB-REDUCT siRNAを合成し、in vivo動態を評価する。1) 蛍光標識ApoB-REDUCT siRNA投与後の血中siRNA残存量を測定し、血中での滞留性評価を行う。2) 蛍光標識ApoB-REDUCT siRNA投与後の各組織中の蛍光量を測定することで肝移行性を評価する。3)病態マウスの血中LDLを継時的に測定し、ApoB-REDUCT siRNAによるLDLの低下が見られるか評価する。
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