研究課題/領域番号 |
19K05704
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研究機関 | 安田女子大学 |
研究代表者 |
平野 真 安田女子大学, 薬学部, 講師 (60514172)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 正電荷化合物 |
研究実績の概要 |
本研究では金属イオン要求性タンパク質複合体の分離に資する電気泳動法Reverse Native (RN-)PAGEの開発を目的としている。生体内では、酵素などのタンパク質は他のタンパク質等と複合体を形成することで機能が調節されている。そのため、生命現象を統合的に理解する上で、タンパク質複合体の情報は不可欠である。現在、複合体を簡便に分離・分析する手法としてBlue Native (BN-)PAGEという電気泳動法が用いられている。しかし、この方法では前処理で2価陽イオンのキレート剤を添加するため、金属イオンが除かれ複合体は崩壊する。BN-PAGEではタンパク質染色試薬として使用されるクマシーブリアントブルー (CBB) G250をタンパク質複合体に結合させ、複合体に負電荷を付与し陽極への泳動を可能にしている。一方、本研究で開発するRN-PAGEではタンパク質複合体の正味の電荷を正とし陰極側に泳動する。BN-PAGEの成功から、CBB G250は絶妙のバランスで複合体に結合すると言える。そのため、RN-PAGEにおいて、複合体に正電荷を付与する分子はCBB G250の構造を基盤に合成することとした。 はじめにCBB G250の負電荷の本体であるスルホン基の改変を試みたが、スルホン基の脱離やスルホンアミド化は進行せず、複雑なCBB G250を出発化合物として目的化合物を得ることは困難であることが判明した。そこで、より小さな化合物としてCBB G250の母骨格から改変するルートとさらに小さな化合物を出発化合物としてCBB G250に類似した骨格を組み立て、側鎖に正電荷を付与するルートで候補化合物の合成を進めた。これらのルートにより合成された候補化合物の物性を検証した。水溶性は乏しかったもののタンパク質検出に有効な蛍光を発することが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
作成した化合物の物性評価により、タンパク質検出に有用な蛍光を発する分子を得られたのは大きな一歩である。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の流行による移動制限により、他研究機関で実施予定だった実験が進められなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
合成した化合物が蛍光を発することが示されたが、水溶性が乏しかった。水溶液で扱えるようにするため、構造を改変し、より水への溶解度を高める。pHが中性付近の緩衝液中で陰極側に泳動可能か否か明らかにして候補化合物を絞り込む。さらに、タンパク質への結合能を比較する。候補化合物は蛍光色素として機能するのため、タンパク質をNative PAGE後、CBB染色を行うように上記化合物によりゲルを染色し、染色能をタンパク質結合能として評価する。 続いて、糖タンパク質である卵白アルブミンとその糖鎖構造を認識し、カルシウムイオン依存的に複合体を形成するレクチンBC2L-Aを複合体モデルとして、これまでに絞り込んだ化合物が複合体形成に与える影響を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、学会等の学術集会がオンラインで開催されたり、中止になるなどして出張旅費の支出がなかったことや他の研究機関で予定していた実験が実施できていないため。
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