研究課題
遺伝子修復は生体の恒常性維持機構であり、その異常はがんの病理とも深くかかわる。中でも、ヒト8-OxoGuanine Glycosylase 1 (hOGG1) は 修復系で中核的役割を果たす酵素である。そこでがん病理の理解および生体の恒常性維持機構の理解に向けて、hOGG1の触媒機構の解明に挑む 。hOGG1では、 Lys249(K249)とAsp268(D268)が触媒残基と目されている。しかしこれらの触媒残基の化学的役割については未同定の部分が多い。そこで上記活性残基の触媒機構上の役割の解明を目指し、hOGG1タンパク質と基質DNA複合体についてNMRによる物性解析およびX線結晶構造解析を実施する。なお、海外研究協力者のVladimir Sychrovsky博士 (チェコ科学アカデミー) の理論計算によれば、K249は脱塩基反応の際に8oxoG塩基へのプロトン供与体としても機能することが示唆されてい る。本仮説を証明することも当研究の目的である。上記の研究目的を受けて、2020年度までに以下の研究を実施した。1) メカニズム解析を指向したhOGG1変異体を作製 (K249を他のアミノ酸に置換)し、pH依存的な酵素活性の変化から酵素学的pKaを決定。2) 変異体および天然型hOGG1を用いてNMR分光法による活性残基のpKa値を直接的に決定した。なお、2021年度は、実験1)の酵素学実験の精密化(グリコシラーゼ活性のみのpH依存性観測)を実施した。実験1)より、変異体は天然型と異なり、酸性側で活性を持つことがわかった。また、 酵素学実験・NMR測定から決定されたpKa値は概ね一致した。この事実から、グリコシラーゼ反応には活性残基のプロ トン化が必須であること、即ち、249番目の活性残基がプロトン供与体となることを支持する。
すべて 2021 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 備考 (1件)
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