Liver receptor Homologue-1(LRH-1もしくはNR5A2)は初期発生で重要な役割を担うばかりりでなく、肝臓、膵臓、卵巣においても遺伝子発現制御を担う核内受容体(Nuclear Hormone Receptor)の1つである。胚性幹細胞(ES細胞)においてOct3/4の発現制御も行っていることが示されていると共に、人工多能性幹細胞(iPS細胞)の誘導においてもOct3/4を代替しうる因子であることが示されるなど、幹細胞との関わりも深いタンパク質である。さらに、この転写因子はステロイドの代謝やコレステロール、胆汁酸のホメオスタシスにも関わるのみならず、乳癌、すい臓癌といった癌との関連も報告されている。このような背景から、LRH-1分子をターゲットにした低分子の薬剤候補化合物のスクリーニングが米国を中心に行われてきている。すなわち、基礎生物学としてのみならず、医学や薬学の観点からも注目されている分子である。 このLRH-1はN末端からN末端ドメイン、DNA-binding domain(DBD)、天然変性領域からなるヒンジ領域、Ligand-binding domain(LBD)から構成されるが、このLRH-1分子については、LRH-1全長、DBD-ヒンジ-LBD、DBD単独、ヒンジ-LBD、LBDの発現・精製コンストラクトを作成し、特に全長分子がDNA2重鎖に結合した形での立体構造解析を試みてきた。これまでX線結晶構造解析のための結晶化に取り組んだが、結晶が得られなかったことから、X線結晶小角散乱解析を試みた。また、精製用タグ除去によるサンプル精製条件の最適化に取り組み、クライオ電子顕微鏡解析を試みたが、サンプルの自己会合が観察された。今後、単粒子解析を行うためにはさらに精製条件を最適化し、安定な条件を見出す必要があることがわかった。
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