研究実績の概要 |
本研究では、タンパク質やペプチドなどの生体分子に機能性分子を官能基・部位選択的に化学修飾し、狙った状況や環境、タイミングで機能性分子を解離する新たな方法論の開発に取り組んでいる。これまで、光応答的に化合物を放出する3-アシルインドリジンの化学反応の開発に成功している(Organic Letters 2020, 22(14), 5434-5438)。本反応の有用性を高めるために、ペプチドカップリングに広く使用されている縮合試薬を用いて、カルボン酸から3-アシルインドリジンを温和な条件で、直接的に合成する手法の開発を行った。本研究成果については、査読付き国際論文雑誌にて公開された(The Journal of Organic Chemistry 2021, 2021, 86(17), 11822-11834)。また、発表雑誌のSupplementary Journal Coverに採択された。この他、国内学会(4件)および国際学会(3件)で口頭発表を行った。さらに、本研究に関連して出願を行なっていた国際特許が公開された(国際特許番号WO 2021/177343 A1)。最後に、アミンやアミド、チオールの光応答的な化合物の連結と放出を行う新たな光反応の開発に取り組んだ。特に、アミンと3-アシルインドリジンとの光応答的なアミド化反応について進展が見られた。幅広い官能基を持つアミンを光応答的に3-アシルインドリジンに連結できることが分かった。本反応は、紫外光などの短波長光よりもエネルギーの低い赤色光の短時間の照射で進行することが特長である。本研究成果について論文投稿に向けた準備を進めた。
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