研究課題/領域番号 |
19K05709
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
塩野 義人 山形大学, 農学部, 教授 (80361278)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 共培養 / エンドファイト / 玄米 / アルテナリオール / コクリオキノン |
研究実績の概要 |
糸状菌は多様な化学構造を有する二次代謝産物を生産する。ゲノム解析技術の進歩により、二次代謝産物生合成遺伝子の多くは発現していないことが明らかに なっている。すなわち、一株の菌において、我々がまだ知らない新規な二次代謝産物を生産する能力がある事を意味している。二次代謝の生合成に関連する遺伝子群がどのような物質を生合成するのかが、不明な場合にクリプティックという表現が用いられ、未発現の遺伝子をクリプティック遺伝子と言われている。そこで二次代謝産物を得ることを目的に、異種の微生物間の相互作用を利用した「共培養法」により、クリプティック遺伝子を活性化し、新たな代謝産物を探索することを試みた。 昨年度から実施しているスクリーニングより、未同定の糸状菌(SL-2-1株とSS-5W株)の混合培養より、単一純粋培養では、見られない物質の存在が明らかになった。そこで、それらをシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより、精製し、二種の物質を明らかにした。NMRを用いた化学構造解析の結果より、それらは、抗菌活性物質として知られる既知のアルテナリオールと9―メキトキシーアルテナリオールであることを明らかにした。 また、別の二種の糸状菌の混合培養により、すでに、コクリオキノン類の新規誘導体を生産していることが判明しており、それらの物質の詳細な化学構造を検討した。さらに、それの絶対立体配置を明らかにするために計算化学を用いたECDスペクトルやNMRデータを実験データと比較しながら検証した。また、この研究の過程で得られた新規生理活性物質に関しては、学会発表と論文発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
共培養で、生理活性物質を生産する菌類の組み合わせが見つかり、単離した物質の中には、数種の新物質が含まれていることが判明した。
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今後の研究の推進方策 |
未同定の糸状菌(SL-2-1株とSS-5W株)の混合培養においては、再度培養を行い、これら以外の物質が生産されていないかどうか、HPLCにより分析を行う。また、培養条件を検討することにより、他の物質の生産性を確認する。 一方、もう一組の複合培養の菌類については、培養物より得られた物質(コクリオキノン類など)のNMRデータの解析により、化学構造解析を行う。さらに、新しく単離された物質については、計算化学を用い、ECDスペクトルを予測し、実験値と比較しながら、立体配置を決定する。化学構造の確認のために、数種のモデル化合物を想定し、計算化学より、それらのモデル化合物をシミュレーションしたNMRデータを実験NMRデータと比較する。また、異なる培養条件での生産性に関して、これら以外にも有用な物質を生産しないかどうかについても、検討する。また、それらの生理活性作用について、細胞毒性試験など、調査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養条件の検討に予想以上の時間を費やしたことから、次の実験で、使用する予定であった消耗品を購入しなかったため。
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