研究課題
Pradimicin A (PRM-A) は,マンノース (Man) に結合するユニークな天然物である。Manは生物学的に重要な糖鎖の構成糖であることから,PRM-Aは糖鎖研究における貴重なツールとなる可能性を秘めている。しかしながら,PRM-Aは高い凝集性を有するために取り扱いが難しく,市販されているにも関わらず,糖鎖研究に全く活かされていない。昨年度までに,我々はPRM-Aの18位カルボキシ基をアミド化することで凝集性を改善できることを明らかにし,糖タンパク質の染色や酵母の検出に利用できるアミド誘導体を開発してきた。しかしながら,18位カルボキシ基のアミド化はMan結合活性を低下させてしまうという問題点があった。そこで本年度は,PRM-Aの4'位アミノ基に着目し,Man結合活性を保持しながら凝集性を軽減する構造修飾法を見いだすとともに,糖鎖研究用ツールの開発に展開できる誘導体の開発を進めた。PRM-Aの4'位アミノ基を改変した8つの誘導体を合成し,それらの凝集性とMan結合活性を評価した。その結果,4'位アミノ基をアセチル化し,かつxylose (Xyl) 部分を切断した誘導体が凝集性を示すことなく,PRM-Aと同等のMan結合活性を示すことを見いだした。さらに本誘導体の4'位アセトアミド基をアジド基に置換した誘導体 (PRM-AS) を設計・合成し,PRM-ASも凝集することなく,PRM-Aに匹敵するMan結合活性を示すことが明らかになった。さらに,ヒュスゲン環化付加反応によってPRM-ASにアルキンを連結しても非凝集性とMan結合活性が保持されることを確認した。以上の結果は,クリックケミストリーによってPRM-ASに様々な機能性分子を連結できる可能性を示しており,PRM-ASが糖鎖研究用ツール開発のための有力な鍵誘導体となりうることが示唆された。
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