研究課題/領域番号 |
19K05717
|
研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
円谷 健 大阪府立大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (00372855)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | モノクローナル抗体 / ハイブリドーマ / シガトキシン / シガテラ / 抗原 / 海洋毒 |
研究実績の概要 |
カリブ海型シガトキシン(C-CTX)は、米国大西洋やカリブ海海域におけるシガテラ食中毒の原因毒素である。最近では、ヨーロッパでもC-CTXを原因とする食中毒が発生して大きな問題となっている。これらの地域におけるシガテラの予防には、魚類からのC-CTXの微量検出法を確立することが必要であるが、そのためにはC-CTXを特異的に認識する抗体の作成が必須となってくる。本研究では、C-CTXの部分構造を有する低分子ハプテンを免疫することによりC-CTXを特異的に認識するモノクローナル抗体の作製し、これらの抗体を用いたC-CTXの微量検出法の開発を目的とする。 1. C-CTX左端構造を認識するモノクローナル抗体のC-CTX結合性の評価:C-CTX-1の左端部分構造(A-E環)からなるハプテンを免疫することによって獲得した3種類のモノクローナル抗体の内、ハプテンに最も強く結合したモノクローナル抗体4H5を用いて、C-CTX-1への結合活性を調べた。まず、C-CTX-1を含有する魚肉抽出物を用いてモノクローナル抗体4H5IgGの阻害実験を行ったところ、約30%の阻害が確認された。そこで、4H5のFab断片を用いて、比較的高純度のC-CTX-1を含むサンプルを用いて阻害実験を行ったところ、4H5 Fabは強い阻害を示し暫定的Kd = 0.2 nMとなった。また、本抗体はその左端構造が類似しているCTX3Cにも弱く結合することが判明した。この結果よりモノクローナル抗体4H5はC-CTX-1を特異的に認識していることが明らかとなった。 2. C-CTX右端構造を認識するモノクローナル抗体作製のためのハプテンの合成:昨年度設計した5環性のC-CTX-1の右端構造からなるハプテンを合成することに成功した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、昨年度までに作製したC-CTXの左端構造を認識するモノクローナル抗体について、純度の高いC-CTXを含むサンプルを用いた阻害実験を行うことにより、特異的にC-CTXを認識することを明らかにできた。さらにC-CTX濃淡構造を認識するモノクローナル抗体調製のためのハプテンの合成を完了し、来年度はハプテンコンジュゲート(抗原)の作製および免疫を開始できる状態である。これらの結果は、本研究課題の遂行にあたって、非常に重要な結果である。したがって、当初の計画をほぼ順調に遂行することができた。
|
今後の研究の推進方策 |
昨年度までに得られた結果をもとにして、C-CTXの右端構造を認識するモノクローナル抗体を作製する。次に左端構造および右端構造を認識するモノクローナル抗体を組み合わせたサンドイッチELISAによるC-CTの微量検出法を確立する。 1. C-CTX右端構造を認識するモノクローナル抗体の作製:5環性のハプテンをKLHやBSAと結合させ抗原を作製する。これをマウスに免疫し、モノクローナル抗体産生ハイブリドーマを獲得する。ハイブリドーマを大量培養し、純度の高いモノクローナル抗体を調製する。さらに、得られたモノクローナル抗体のC-CTXに対する結合活性を競合ELISA法あるいはSPR法により評価する。 2. サンドイッチELISA法によるC-CTXの微量検出法の確立:C-CTXの左端構造を認識するモノクローナル抗体および右端構造を認識するモノクローナル抗体のいずれかを酵素標識し、これらを用いたサンドイッチELISA法によりC-CTXの高感度検出検討する。
|