研究課題/領域番号 |
19K05718
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研究機関 | 岩手医科大学 |
研究代表者 |
田村 理 岩手医科大学, 薬学部, 准教授 (30362619)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 血管新生阻害 / 抗がんリード / 海洋真菌 / ポリケチド / 構造活性相関 |
研究実績の概要 |
海洋真菌の培養上清より見出した血管内皮細胞に選択的な生育阻害活性を示す新規化合物epoxycarolideをシード化合物として研究を展開している。全絶対立体配置の決定と立体異性体を用いた構造活性相関を検討する目的で全立体異性体の合成を検討している。既にtrans-エポキシド立体異性体のスペクトルが天然物と一致しないことが判明しており、cis-エポキシド立体異性体の合成に着手している。昨年度の検討によって、cis-エポキシド体合成に必要なシントンであるcis-epoxyaldehydeの合成は達成できたが、今年度において種々検討した結果、本化合物が室温で容易に分解するほど著しく不安定であることが判明したため、cis-エポキシドの閉環前駆体として調製して以降の反応に用いるルートへと変更した。また、本シントンの合成における収率の芳しくない光延反応による水酸基の立体反転について、酸化後に不斉還元することで大幅な収率の改善を達成できた(33%→80%)。 改良したルートによってcis-epoxyaldehyde閉環前駆体を調製し、アルドール縮合に付すことでカップリング体を得ることに成功した。しかしながら、続く脱水反応あるいはエポキシド閉環反応については良好な結果が得られておらず検討中である。 一方で、既に合成した中で、天然物に匹敵する活性を示した立体異性体について、側鎖エポキシドを欠失させた類縁体の合成について着手しており、すでにアルドール縮合体まで合成を完了している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度合成したcis-epoxyaldehydeが思いの外不安定であり、以降の反応が全く上手くいかずに時間をロスした。一方で、エポキシド閉環前駆体として縮合反応に用いることで、この点は解決できた。さらに、致命的に収率の悪かったステップを改善できたことは大きな前進であった。 全体的にコロナ禍の影響によって、研究を進めにくい状況が続いており、当初の予定よりはやや遅れていると感じている。また、年度末での異動のために時間が取られたことも影響している。
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今後の研究の推進方策 |
目的のcis-epoxide体の合成まであと3ステップになっており、脱水反応、エポキシド閉環、立体選択的ジオール化をtrans-epoxideの場合と同様にして行うことで、まずは合成を完了してルートの確立を目指す。 開拓したルートによって、全立体異性体の合成を達成し、天然物の絶対立体配置を決定する。 一方、既に見出した天然物に匹敵する活性を示す立体異性体については、部分構造を改変した類縁体合成を開始しており、活性発現に必要となる官能基を明らかにしていていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により、発表を予定していた国際学会が延期となり、その分の旅費が残額として出た。 新設の学部へと異動したため、これらの残額は初期の物品試薬費として活用する。
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