研究課題/領域番号 |
19K05721
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研究機関 | 聖マリアンナ医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 利行 聖マリアンナ医科大学, 医学部, 助教 (10350430)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 再発性多発軟骨炎 / 血清 / バイオマーカー / ペプチドミクス |
研究実績の概要 |
目的:現在、再発性多発軟骨炎(RP)の診断にはMcAdamらが提唱した基準が用いられているが、発症初期には臨床症状が揃わず基準を満たさないこともある。現在、RP診断に有用な検査は確立されていない。RPは自己免疫反応の関与が考えられており、Ⅱ型コラーゲンやmatrilin-1に対する自己抗体が検出されている。しかしこれらは他の自己免疫疾患でも同様の頻度で検出されるため、RP診断マーカーとしては使用されていない。本研究では血清ペプチドを網羅的に解析し、RPのバイオマーカーとなるペプチドが存在するかを検討した。 方法:RP患者19例、及び対照群として関節リウマチ(RA)患者21例と健常人(HC)19例より末梢血を採取し血清を分離した。弱陽イオン交換体を搭載した磁気ビーズを用いて、血清ペプチドを抽出した。マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF/MS)を用いて抽出ペプチドを測定した。主成分分析により各群の血清ペプチドのプロファイルを解析し、各群間ではずれ値を示したRA1例及びHC2例を除外した。ペプチドのイオン強度を用いて、直交部分最小二重判別分析(OPLS-DA)にてRP群とRA及びHC群を判別するモデル作成を試みた。 結果:全160個の血清ペプチドを認めた。RP群とHC群、またRP群とRA群の間でイオン強度に1.2倍以上の差を認めるペプチドを31個、その内1.5倍以上の差を認めるペプチドを8個検出した(p<0.05)。160個のうち14個のペプチドのイオン強度を用いたOPLS-DAにより、RP群とRA及びHC群を完全に判別した(説明変数が0.967、予測変数が0.297)。 結論:RPでイオン強度が変化していた血清ペプチドは病態に関与する可能性が示された。またRPと、RA及びHCを判別した14個の血清ペプチドはRPのバイオマーカー候補と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は判別モデルの作成が大目標であったが、既に14ペプチドモデルのペプチドを含め、RPの判別に有用なペプチドの同定を現在進めており、ほぼ予定通り進行している。また、数個のペプチドの組み合わせにより、さらに予測効率の高いモデルが作成可能か、同定されたペプチドを組み合わせて試みている。
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今後の研究の推進方策 |
14ペプチドのモデルに加え、数個のペプチドモデルで予測効率の高いものが作成されればそれも含めて、モデル作成に用いた集団(training set)とは異なる患者集団(testing set)を用い、モデルの評価を行う。既に測定可能なRP18例、及び対照群としてRA21例、多発血管炎性肉芽腫症(GPA)7例、HC18例の血清を予備的に測定している。testing setにおいて、各モデルがどの程度のAUROC、感度、特異度、陽性適中率を示すかを評価する。また、モデルを構成するペプチドのアミノ酸配列を決定、親タンパク質を同定して、RPでイオン強度が変化している、またはRPのバイオマーカー候補となる血清ペプチドの、RPの病態への関連性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度の計画では、RP判別モデルの作成、モデル構築に重要なペプチドのアミノ酸配列決定及び親蛋白質同定を予定していた。RP判別モデルの作成は概ね終了したが、ペプチドの解析中で令和元年度が終了した。モデル構築に時間を要したことが、全予定を遂行できなかった主原因と考えている。 各血清ペプチドモデルの評価のため、testing setの患者集団における血清ペプチドの網羅的解析を行う。弱陽イオン交換体搭載磁気ビーズ、専用の8連チューブ及びチップを購入し、血清からのペプチド抽出を行う。抽出された血清ペプチドはMALDI-TOF/MSで測定されるため、MALDI-TOF/MS測定用の試薬(アセトニトリル、エタノール等)を購入する。バイオマーカー候補として重要なペプチドを同定する際、分子量が大きい場合は液相クロマトグラフィー質量分析器を用いるため、その測定用試薬も必要となる。なお、研究結果を公表し国内外から広く意見を募るため、国内外の関連学会へ参加する費用が必要である(旅費等)。また、当該研究内容を論文にまとめ投稿するため、英文校正費用及び投稿費用等が必要となる。
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