背景:軟骨組織が炎症を来たす再発性多発軟骨炎(RP)には、診断に有用なバイオマーカーがない。本研究では、血清ペプチドを用いRP診断に有用な判別モデルの構築を試みた。 方法:RP37例、関節リウマチ(RA)43例、健常者(HC)37例の血清を、第1群(RP19例、RA22例、HC19例)及び第2群(RP18例、RA21例、HC18例)に分けた。第1群を用いた質量分析でペプチドを網羅的に検出し、ペプチドイオン強度の主成分分析で外れ値を示した3例を除きモデル構築群(RP19例、RA21例、HC17例)とした。第2群はモデル検証群とした。ペプチドイオン強度を用いた判別モデルは、モデル構築群を用いたOPLS-DAで構築し、モデル検証群を用いたJMPで検証した。一部のペプチドはタンデム質量分析により同定した。 結果1:モデル構築群で160ペプチドが検出され、RP群でHC群、RA群、及びHC群とRA(non-RP)群と比べて、各々27、9、及び9ペプチドが±1.2倍以上のイオン強度を示した(p<0.05)。OPLS-DA分析により、上記160ペプチド中の11個、9個、及び14個のペプチドイオン強度を用いて、モデル構築群のRP群を各々HC群、RA群、及びnon-RP群から完全に判別できるモデル(RP/HC-11P、RP/RA-9P、RP/nonRP-14P)を構築した。 結果2:モデル構築群でRPとHC、RPとRA、RPとnon-RPで1.2倍以上のイオン強度の差を示すか結果1に示す3つのモデルを構成するペプチドのうち19個が同定され、凝固関連の蛋白質由来のものが多かった。 結果3:RP/nonRP-14Pの構成ペプチドで同定されたのは10個で、その中の4個のペプチドの組合わせで判別モデルを構築した。モデル構築群で感度及び特異度が65.0%以上を示したモデル57個のうち、4つの判別モデルが、モデル検証群及びモデル検証群に多発血管炎性肉芽腫症(GPA)7例を加えた群で、感度及び特異度が70.0%以上を示した。 結論:構築した4つのRP/nonRP判別モデルは、RP診断に有用である可能性がある。
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