研究課題/領域番号 |
19K05723
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
遠藤 玉樹 甲南大学, 先端生命工学研究所, 准教授 (90550236)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | RNA / 構造変化 / バイオセンサー / セレクション / 合理設計 |
研究実績の概要 |
本研究では、細胞内で効率良く機能するRNA構造スイッチを合理的に設計する技術基盤を確立する。そのために、 1. 細胞内分子環境でのRNA構造スイッチの簡便な最適化技術を【構築する】 2. 細胞内でのRNA構造スイッチの機能を【実証する】 3. RNA構造スイッチの熱安定性解析から合理的な設計技術を【確立する】 という3つの研究課題を段階的に遂行する。 当該年度は、RNA構造スイッチの簡便な最適化技術を【構築する】研究を中心に進めた。まず、百万コピー程度のクローン化された鋳型DNAと転写されたRNAが固定化された微小粒子(RNA capturing microsphere particles: R-CAMPs)を構築する技術を考案し、蛍光分子に結合してそのシグナルを増強させるRNAを選別することで、RNA配列の最適化技術の基本原理を確立した(Small, 15, 1805062 (2019))。次に、S-アデノシルメチオニン(SAM)に結合するRNAアプタマーと蛍光分子に結合するRNAアプタマーの間にランダムな塩基配列を挿入したRNA構造スイッチのライブラリを設計した。その後、設計した鋳型DNAを用いてR-CAMPsを作製し、2段階の選別(SAMが存在しない溶液中では蛍光シグナルを発しないRNAの選別(1段階目)、およびSAMに応答して蛍光分子のシグナルを増強させるRNAの選別(2段階目))を行うことで、蛍光シグナルでSAMを検出するRNA構造スイッチの最適化を行った。その結果、最適化されたRNA構造スイッチを用いて細胞内でのSAM濃度の変動を蛍光シグナルで検出することに成功した(Anal. Chem., in press)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題は3年間の研究期間で、上述の3つの研究課題を段階的に遂行する計画であり、2年目以降に、細胞内でのRNA構造スイッチの機能を【実証する】研究を遂行することを想定していた。初年度にRNA構造スイッチの最適化が計画以上に順調に進み、最適化されたRNAを用いて細胞内でのSAMの検出にも成功した。また、その研究成果はすでに論文として学術雑誌への掲載が決定している(オンライン版に掲載済み)。そのため、本研究課題は当初の計画以上に進んでいると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
初年度に最適化したSAMの検出を可能にするRNA構造スイッチは、細胞内での機能が実証されているものの、現段階では細胞外からRNAをエレクトロポレーションで導入して蛍光シグナルを検出している。そこで、細胞内にRNA構造スイッチをコードしたプラスミドDNAを導入し、細胞内で安定的にRNAを転写する。これにより、同一細胞内での経時的なSAM濃度の変動をリアルタイムで検出することを試みる。 一方で、低分子化合物に結合してその蛍光シグナルを増強するRNAアプタマー(light-up aptamer)として複数種類のバリエーションが近年報告されてきている。蛍光分子とlight-up aptamerの組み合わせによっては、色調を見分けて1細胞内での同時検出が可能になると考えられる。そこで次年度以降、R-CAMPsを用いたRNA構造スイッチの最適化技術を活用し、細胞内で複数種類の標的分子を同時かつ独立に検出できるRNA構造スイッチのバリエーションを構築していくことにも着手する。複数種類のRNA構造スイッチを最適化していく中で、得られるRNA配列、およびその予測される二次構造と安定性を比較することで、RNA構造スイッチの合理的な設計指針を得ることもできると期待される。
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