研究実績の概要 |
本研究では、細胞内で効率良く機能するRNA構造スイッチを合理的に設計する技術基盤を確立する。 2020年度は、細胞内で複数種類の標的分子を同時かつ独立に検出できるRNA構造スイッチを構築していくことを目指し、色調の異なる蛍光性小分子に対するlight-upアプタマー(小分子に結合することでその蛍光を増強するRNA)を構築することを進めた。これまでに確立したRNA配列の最適化技術を用いて、三種類の蛍光性小分子を混合した溶液の中でlight-upアプタマーの選別を行った結果、それぞれの小分子を直交的に見分けて結合できるlight-upアプタマーを獲得することに成功した。現在、獲得されたlight-upアプタマーをRNA構造スイッチに拡張し、細胞内での機能を評価している。また、核酸構造に結合することで蛍光シグナルの増強を示す小分子の新規合成も試みた。グアニン四重らせん構造に結合するチオフラビンTの誘導体を合成し、四重らせん構造に対する特異性と、結合した際の蛍光シグナルの変動を解析した(Molecules, 25, 4936 (2020))。 さらに2020年度は、細胞内で効率的に機能する核酸構造スイッチの合理的な設計を行う際に重要となる、細胞内環境を考慮した系における、最近接塩基対の形成に伴う熱安定性パラメータをデータベース化することでも成果を得た(Proc. Natl. Acad. Sci. USA., 117, 14194 (2020)、Nucleic Acids Res., 47, 12042 (2020))。このデータベースは、セレクションによって得られるRNA構造スイッチの構造と熱安定性予測を可能にし、合目的的かつ合理的なRNA構造スイッチの配列設計に活用することができる。
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