研究実績の概要 |
本研究では、細胞内で効率良く機能するRNA構造スイッチを合理的に設計する技術基盤を確立する。 2021年度は、色調の異なる蛍光性小分子に対するlight-upアプタマー(小分子に結合することでその蛍光を増強するRNA)を基に、細胞内で標的となる分子の多色検出を可能にするRNA構造スイッチの構築を進めた。2020年度までに、異なる蛍光性小分子に対するlight-upアプタマーを複数種類取得することに成功した。そこで、細胞内でのRNA検出を試みた結果、本研究で得られた青、緑の蛍光を増強するlight-upアプタマー、および既存の赤色蛍光を増強するlight-upアプタマーを併用することで、細胞内で3種類のRNAを同時にイメージングすることに成功した(学会発表済み)。さらに、これまでに得られている配列設計指針を基に、S-アデノシルメチオニン(SAM)、およびテオフィリンを検出するためのRNA構造スイッチを合理的に設計した。その結果、生細胞内におけるSAMおよびテオフィリンの多色同時検出に成功した(投稿論文準備中)。 2021年度はさらに、本研究課題で構築したRNAのセレクション技術を用いて、植物の代謝産物であるベルベリンに相互作用するRNAを取得した。RNAとベルベリンの複合体構造の解析も行い、ベルベリンがバルジを有するRNA二次構造に選択的に相互作用することを明らかにした(Nucleic Acids Res., 49, 8449 (2021))。細胞内に存在する代謝産物に相互作用するRNAを取得し、合理設計によりRNA構造スイッチに組み込むことで、様々な標的代謝産物の検出を可能にするRNA構造スイッチを構築していくことができると期待される。
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