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2020 年度 実施状況報告書

植物由来鉄キレーター・ムギネ酸前駆体による哺乳類における鉄吸収機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 19K05727
研究機関公益財団法人サントリー生命科学財団

研究代表者

村田 佳子  公益財団法人サントリー生命科学財団, 生物有機科学研究所・統合生体分子機能研究部, 特任研究員 (60256047)

研究分担者 難波 康祐  徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (50414123)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード鉄吸収 / 小腸 / トランスポーター / ニコチアナミン / 植物性食物 / 鉄錯体 / アフリカツメガエル卵母細胞 / 蛍光標識
研究実績の概要

本研究では、植物内在性キレート化合物であるニコチアナミン(NA)鉄錯体の小腸内での代謝や哺乳動物におけるキレート型鉄輸送機構を解明することである。その目的のため、今年度は以下の研究を行った。

1) NA鉄錯体投与後の小腸各部位での鉄とNAの定量:マウスに59FeNA錯体を投与して、30分後の小腸各部位の鉄濃度を比較した結果、近位空腸で最も鉄濃度が高かった。また、NAの定量は小腸各部位の抽出物をFMOC化してLC-MSで定量を行った結果、鉄と同様に近位空腸で最もNA濃度が高かった。
2) NA標識体合成と取り込み実験:NAの腸内への取り込みを観察するために、クマリン標識ムギネ酸の合成に成功している研究分担者はダンシル標識NAを合成し、標識体をMSとNMRで、その鉄錯体をMSで合成物を確認した。すでに小腸でNA鉄錯体を輸送することを明らかしたアミノ酸トランスポーターPAT1を発現させたアフリカツメガエル卵母細胞(oocytes)にダンシル標識NA鉄錯体を30分反応後、OCT包埋して凍結切片を作成した。共焦点顕微鏡で観察し、トウモロコシのNA鉄錯体トランスポーターZmYS1(ポジティブコントロール)と同様に、oocyte内部にNAダンシル基の蛍光を確認し、取り込まれたことを明らかにした。
3) NA鉄錯体排出トランスポーターの同定:小腸上皮の基底側にあるNA鉄錯体の排出トランスポーターを同定するため、その候補遺伝子をNA鉄錯体投与したマウス小腸およびCaco-2細胞の定量PCRや次世代シークエンサーのトランスクリプリトーム解析を行い、アミノ酸排出トランスポーター類に絞り込んだ。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでの研究成果において、植物生体内に存在するキレート化合物ニコチアナミン(NA)が鉄錯体として小腸からアミノ酸トランスポーターPAT1 (proton coupled amino acid transporter 1)を介して吸収されることを明らかにした。また、マウス投与実験において、鉄のみ投与よりNA鉄錯体投与したマウスの腎臓、肝臓、脾臓で鉄濃度がより高かったことから、既存の遊離の鉄の吸収とは異なる、新たな鉄錯体としての吸収メカニズムを明らかにした。この成果は、Journal of Biological Chemistryに受理され、Editors’Pickに選ばれた。

今後の研究の推進方策

1)NAおよび鉄錯体の排出トランスポーターの同定: アフリカツメガエル卵母細胞(oocytes)にヒトの鉄排出トランスポーターFPN1およびNA鉄錯体排出候補遺伝子のcRNAを導入し、タンパク質を発現させて59Feの排出量を測定する。さらに、輸送活性Kmの算出を行い、また阻害剤の効果を検証する。排出遺伝子が同定できたら、その発現抑制または過剰発現Caco-2またはHEK細胞を作成し、その鉄排出活性および抗体染色による排出トランスポーターの発現場所を確認する。

2)小腸および細胞内でのNAおよび鉄錯体の検出:これまでNAダンシル標識鉄錯体の取り込めをPAT1を発現させたoocytesで確認したので、HEK,Caco-2細胞または小腸でNAダンシル標識鉄錯体を取り込ませて、その蛍光観察を行い、生体内のNAの代謝を明らかにする。

備考

所属研究機関ホームページ (http://www.sunbor.or.jp) のトピックスに掲載

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] Iron uptake mediated by the plant-derived chelator nicotianamine in the small intestine2021

    • 著者名/発表者名
      Murata Yoshiko、Yoshida Masami、Sakamoto Naho、Morimoto Shiho、Watanabe Takehiro、Namba Kosuke
    • 雑誌名

      Journal of Biological Chemistry

      巻: 296 ページ: 100195 (1~12)

    • DOI

      10.1074/jbc.RA120.015861

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Development of a mugineic acid family phytosiderophore analog as an iron fertilizer2021

    • 著者名/発表者名
      Motofumi Suzuki, Atsumi Urabe, Sayaka Sasaki, Ryo Tsugawa, Satoshi Nishio, Haruka Mukaiyama, Yoshiko Murata et al
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 12 ページ: 1558 (1-13)

    • DOI

      10.1038/s41467-021-21837-6

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [備考] 野菜に含まれる成分ニコチアナミンによる小腸での鉄の取り込み機構 J. Biol. Chem.に掲載

    • URL

      http://www.sunbor.or.jp/topics/file/topics_2021_01.pdf

  • [備考] イネ科植物の根から分泌されるムギネ酸の合成類縁体による環境に優しい次世代肥料の開発

    • URL

      http://www.sunbor.or.jp/topics/file/topics_2021_02.pdf

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公開日: 2021-12-27  

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