研究実績の概要 |
本研究では、植物内在性キレート化合物であるニコチアナミン(NA)の小腸内での鉄吸収・代謝や哺乳動物におけるキレート型鉄輸送機構を解明することである。その目的のため、今年度は以下の研究を行った。 1)NAおよび鉄錯体の排出トランスポーターの同定: アフリカツメガエル卵母細胞(oocytes)にヒトの小腸基底膜側に局在する鉄排出トランスポーターFPN1およびNA鉄錯体排出候補遺伝子のアミノ酸排出トランスポーターのcRNAをインジェクションして、各々タンパク質を発現させた。各々のoocytesに59FeまたはNA-59Fe錯体をインジェクションして1時間後の59Fe排出量をカウントした。その結果、59Fe はFPN1発現oocytesで有意に排出していたが、NA-59Fe錯体投与では4F2hc (SLC3A2)と複合体化してアミノ酸を排出するLarge-中性アミノ酸トランスポーターLAT2 (SLC7A8)がFPN1よりも有意に大きな排出量を示した。またLAT2阻害剤である2-amino-bicyclo[2,2,1]heptane-2-carboxylic acid (BCH)を添加すると濃度依存的にNAの排出量が減少した。このことからNA鉄錯体は、十二指腸の基底膜に存在する既存の2価鉄排出輸送体FPN1とは異なり、近位空腸に存在する4F2hc/ LAT2複合体であるアミノ酸トランスポーターで排出すると考えられた。 2)小腸および細胞内でのNAおよび鉄錯体の検出:これまでNAダンシル標識鉄錯体の取り込みを小腸でのNA鉄錯体取り込みトランスポーターPAT1を発現させたoocytesで確認したので、排出候補タンパク質でNAダンシル標識鉄錯体を取り込ませて、その蛍光観察を行い、NA標識体の取り込みを確認した。
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