研究課題/領域番号 |
19K05729
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
大庭 亨 宇都宮大学, 工学部, 教授 (30291793)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 蛍光プローブ / 膜電位 / 神経細胞 / 超分子 / ケミカルバイオロジー |
研究実績の概要 |
本研究では,精神疾患や認知症の克服に資するため、神経回路研究用の高感度な低分子プローブを開発することが目的である。本研究の膜電位感受性蛍光色素(VSD)の開発目標は、1 mVあたり1%以上の蛍光強度変化を与えるものである。電位感受性はソルバトクロミズムと強い関係があると仮説を立て、ソルバトクロミズムを指標にした分子設計を行なってきた。1)キノリル-ピロール類についての成果をまとめた論文を上梓できた。2)フェノチアジン環およびキノリン環の電子状態の異なるキノリル-フェノチアジン類を合成し、蛍光測定とDFT計算を行った。キノリル-フェノチアジン類のHOMOはフェノチアジン側の電子状態に依存し、電子求引性の増大と共に低下した。一方、キノリル-フェノチアジン類のLUMOはキノリン側の電子状態に依存した。興味深いことに、キノリル-フェノチアジンのキノリン6位に分子ワイヤー(2-(4’-ジメチルアミノフェニル)エチニル基)を導入すると、HOMOおよびLUMOは2位のフェノチアジン部位の電子状態に依らずほぼ同じだった。このことは、この化合物の光物性がジメチルアミノフェニル基とキノリン環の部分だけでほぼ決まることを示している。したがって、今後の分子設計は、この部分のソルバトクロミズム、光安定性、両親媒性に集中すべきであると分かった。3)キノリル-フェノチアジン類には、特に興味深い特徴を新たに見出した。結晶構造解析もでき、構造を踏まえた考察ができると期待される。4)キノリル-ピロール類については、北大・北川先生、長谷川先生との共同研究として物性面の検討を始めることができた。以上の成果は第13回バイオ関連化学シンポジウムなどで発表した。このように令和元年度も研究は順調に進み,実用化に向けた課題を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここまでの成果をまとめた論文を上梓できた。フェノチアジンやカルバゾールを用いた誘導体から、ソルバトクロミズムについての考察を深める事ができた。新たな共同研究者を得て、物性面の検討を始める事ができた。フェノチアジンを組み合わせた誘導体には、特に興味深い特徴を新たに見出した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の課題は、①より強い親水基を導入し、色素の両親媒性を高めること。②電位をかけながら蛍光を測定し、電位依存性を直接的に計測すること。および、そのための新しい実験系の構築。③DFT計算と組み合わせて、これまでに得られた分子設計指針を総合的に考察することである。さらに、④細胞導入、細胞での電位依存性の観察、ヒト細胞以外の細胞の利用なども共同研究者とともに進めていく予定である。
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