2本鎖DNAの配列選択的認識は、核酸研究における基盤的な技術であるため、その応用可能性が非常に高い。これまで、2本鎖DNAを認識を利用したゲノム編集や遺伝子発現制御など、幅広い応用研究が行われている。このような研究において、これまではZinc Finger、TALE、Cas9などのDNA結合タンパクが主に利用されてきた。一方、もし合成分子で2本鎖DNAを配列選択的に認識することが出来れば、実験手技の大幅な簡便化だけでなく、従来のDNA結合タンパクにはない新たな研究展開が期待される。そこで本研究では、人工核酸であるペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid、PNA)の特徴的な2本鎖DNA認識様式であるインベージョンに着目し、新たなDNA認識技術の構築を目指した。 これまでのPNAによるインベージョンでは、その効率的なDNA認識効のために、PNAの核酸塩基部への複雑な化学修飾が必須となっていた。しかし、その合成は非常に煩雑であり、このPNAの合成面が、インベージョン応用研究の汎用化への足かせとなっていた。 そこで本研究では、必要となる核酸塩基への化学修飾を簡素化することで、より簡便なPNA合成を達成し、様々な応用研究に適応しやすいインベージョン系の構築を目指した。今年度は申請書に記載したインベージョンの新たな設計とその構造情報の解明について検討を進めた。特に、構造情報の解明に向けて様々な検討を進めた。また、昨年度得られた成果(新規インベージョン手法の開発)に対し、国際論文誌への投稿を行い、論文採択に向けてのリバイズ用実験などを進めた。
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