研究課題/領域番号 |
19K05731
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研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
中野 博文 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (50242897)
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研究分担者 |
左 一八 会津大学短期大学部, 食物栄養学科, 教授 (20260226)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ウイルス感染阻害 / 日本脳炎 / グルクロン酸 / 化合物ライブラリー |
研究実績の概要 |
現在までに日本脳炎に対する有効な治療薬は臨床で存在せず、日本脳炎ウイルス(JEV)に罹患した患者に対しては対症療法が基本となっている。JEV感染地域の拡大とその高い致死率から、今後JEV感染の流行・拡散を防止し、罹患者の予後を改善するためにも、有効な抗JEV薬の開発が切望されている。本研究では、コンドロイチン硫酸Eが、JEV感染阻害活性を示すことから、二重結合をもつウロン酸誘導体、および、コンドロイチン硫酸の繰り返し二糖単位であるグルクロン酸とN-アセチルガラクトサミンの両者の特徴を有するハイブリッド型のウロン酸誘導体を設計した。 そこで、C-4,5位間に二重結合をもち、C-2 位にヒドロキシ基やアセトアミド基をもつウロン酸誘導体合成法の基本的な合成法の確立と、ライブラリーの作成を行った。このライブラリー構築のために様々なp-置換フェノキシ基やアジド基をC-1位に導入し、さらにアジド基の場合Cu(I)触媒による様々な置換基を持ったアルキンとの反応により1,2,3-トリアゾール誘導体に変換した。このライブラリーのJEVに対する感染阻害効果を測定したところ、高活性な誘導体を見出すことができた。エビの頭より抽出された分子量3万のヘパラン硫酸は、JEV感染阻害効果をもつことが報告されている。一方、そのヘパラン硫酸のヘパリナーゼ消化物は、C-4,5位間に二重結合をもつグルクロン酸誘導体とグルコサミンの二糖となるが、これは全く阻害活性をもたないことが報告されている。我々のライブラリー構築は、適切なアグリコンの選択と、単糖部分の修飾により、低分子量の単糖誘導体でも強力な阻害活性をもたせることに成功し、非常に興味深い結果を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画では、N-アセチルガラクトサミン誘導体および不飽和グルクロン酸誘導体の効率的な合成法の開発の2テーマについて令和2年度までに完成する予定で行っていた。本研究の1つ目のテーマでは、N-アセチルガラクトサミン(GalNAc)残基に着目し、日本脳炎ウイルスに対する感染阻害効果を持つコンドロイチン硫酸Eの最小単位および硫酸基の位置と数を特定するためにN-アセチルガラクトサミン合成共通中間体からそれぞれGalNAc3S, 4S, 6S, 3S4S, 3S6S, 4S6S, 3S4S6S誘導体を合成を検討した。この時、1位はp-メトキシフェニル基を中心に行ってきた。また、鍵段階である硫酸化においてマイクロ波合成をシンプルに行える最下位の機種を用いることで、反応時間の短縮および反応条件の均一化を図ることができた。しかしながら、1位の置換基を変えた合成と硫酸基位置の変更が、予定よりも若干遅れており、まだ結論が出せる状況ではない。しかしながら、C-4,5位間に二重結合をもつグルクロン酸誘導体のライブラリーの構築ができ、予想外に研究が進展することができたので、全体としては、「おおむね順調に進展している」とした。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度、C-4,5位間に二重結合をもつグルクロン酸誘導体のライブラリーの構築では、βアノマーについて行うことできた。既に、エビの頭より抽出されたヘパラン硫酸は、日本脳炎ウイルスに対して感染阻害活性があることが報告されている。ヘパラン硫酸は、六炭糖ウロン酸とグルコサミンの二糖繰り返し単位を持ち、六炭糖ウロン酸はグルクロン酸あるいはイズロン酸でグルコサミンとはαで結合している。そこで、昨年度構築したライブラリーをαアノマーへの拡張を来年度までかけて行いたい。ここで、重要な合成上の課題は、グルクロン酸のαアノマーを効率よく合成することである。そのため、グリコシル化の際のルイス酸、ブレンステッド酸を用いた反応条件の検討を行う。 また、昨年度はN-アセチルガラクトサミン残基に着目していたが、さらに2位がアジド基であるガラクトサミン誘導体について、硫酸基の位置と数を特定するためにそれぞれGalN3 3S, 4S, 6S, 3S4S, 3S6S, 4S6S, 3S4S6S誘導体の合成を検討し、Vero細胞を用いた感染阻害活性とMTT試薬を用いた細胞障害性の評価を行い、より高活性かつ低細胞障害性の化合物を探索する。
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