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2020 年度 実施状況報告書

in silico設計による新規制癌剤としてのGlyoxalase I阻害剤創製

研究課題

研究課題/領域番号 19K05737
研究機関東京理科大学

研究代表者

高澤 涼子  東京理科大学, 薬学部薬学科, 准教授 (10398828)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードGlyoxalase I / in silico創薬 / 制がん剤
研究実績の概要

2020年度は,piceatannolのin silico予測GLO I結合様式(2種)に基づいて構築したファーマコフォアを用いて,ナミキ商事の大規模化合物ライブラリについてin silicoスクリーニングを行ったが,残念ながらファーマコフォアを満たす化合物を得ることができなかった.
既存化合物からファーマコフォアを満たす化合物を見出すことは困難であると考えられることから,新規に設計することを目指し,ファーマコフォアの精度を高めるために,当研究室で見出した新規GLO I阻害化合物TLSC702とpiceatannolについて,GLO Iとの複合体のX線結晶構造解析を行ったところ,TLSC702についての結合様式の解明に成功した.Piceatannolについても結晶の取得はできているので,解析を進めていく.
2019年度に新規GLO I阻害化合物として新たに見出したcaffeic acid phenethyl esterとsulfuretinについて研究を進め,caffeic acid phenethyl ester類縁体から,さらに阻害活性の高い化合物を見出すことができた.Sulfuretinについては培養がん細胞への効果を詳細に検討し, sulfuretinによるがん細胞へのアポトーシス誘導がGLO I阻害によるものであることを確認した.
また,GLO Iが不安感受性に関与することが報告されていることから,piceatannolの抗不安作用とストレス条件下におけるがん増殖能に対する影響について担がんモデルマウスを用いて検討を行った.その結果,piceatannolには低用量による抗不安作用と高用量による抗がん作用の両作用が期待できることが明らかとなった.したがって,GLO I阻害剤は抗不安作用と抗がん作用の両作用を併せもつ新しい作用機序のがん治療薬となることが期待される.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

2020年度には大規模化合物ライブラリから選出した化合物のGLO I阻害評価を行う予定であったが,残念ながらファーマコフォアを満たす化合物を得ることができなかった.
そこで,既存化合物からファーマコフォアを満たす化合物を見出すことは困難であると考えられることから,新規設計を目指し,ファーマコフォアの精度を高めるために,当研究室で見出したGLO I阻害化合物TLSC702とpiceatannolについてGLO Iとの複合体のX線結晶構造解析を行ったところ,TLSC702について結合様式の解明に成功した.Piceatannolについても現在解析を進めている.
GLO I阻害剤設計に役立つ情報の取得のため,2019年度に植物由来天然有機化合物ライブラリからcaffeic acid phenethyl esterとsulfuretinを見出した.現在,さらにもう1種の化合物を見出しており,これらについて類縁体の構造活性相関解析および培養がん細胞への効果の検討を進めている.
また,がん治療においてGLO Iをターゲットとすることの有用性について検討した.GLO Iの不安感受性への関与が報告されていることから,piceatannolの抗不安作用とストレス条件下におけるがん増殖能に対する影響について担がんモデルマウスを用いて検討した結果,piceatannolには抗不安,抗がんの両作用が期待できることが明らかとなった.したがって,GLO I阻害剤は抗不安作用と抗がん作用の両作用を併せもつ新しい作用機序のがん治療薬となることが期待される.
以上から,本研究課題は当初の予定であるスクリーニングからの阻害剤創製についてはやや遅れているが,X線結晶構造解析や天然有機化合物からの新たなGLO I阻害化合物発見など,in silico設計によるGLO I阻害剤創製に向けて大きな進展があったといえる.

今後の研究の推進方策

2021年度は,スクリーニングに関してはナミキ商事の最新版の大規模化合物ライブラリからデータベースを構築して再度スクリーニングを行う.2020年度までは,設定したファーマコフォアを全て満たすという条件でスクリーニングを行っていたため,ヒット化合物を得ることができなかった.2021年度は,ファーマコフォアを8割満たす等,条件を少しゆるくしてin silicoスクリーニングを行うことによってヒット化合物の取得を目指す.
当研究室で見出したGLO I阻害化合物TLSC702について,2020年度にX線結晶構造解析による結合様式の解明に成功した.本研究の課題である「in silico設計による新規制がん剤としてのGLO I阻害剤創製」を進めるため,2021年度はpiceatannolだけでなく,TLSC702をリード化合物とした新規GLO I阻害剤設計も行っていく.X線結晶構造解析で明らかとなった結合様式から高精度のファーマコフォアを構築し,TLSC702に基づいた構造最適化によって新規GLO I阻害化合物を設計する.それらを有機合成し,in vitro酵素アッセイによってGLO I阻害能を実測評価する.併せて,培養がん細胞への効果の検討も行い,高いGLO I阻害能およびがん細胞へのアポトーシス誘導能をもつ化合物へと構造最適化を進めていく.Piceatannolについても,得られた複合体結晶についてX線結晶構造解析を進めていく.
2019年度,2020年度に植物由来天然有機化合物ライブラリからのスクリーニングによって見出した新たなGLO I阻害化合物3種について,類縁体の構造活性相関解析を行い,得られたデータのin silico解析結果を上述のファーマコフォアの高精度化に利用する.さらに,これらの化合物のGLO I阻害による培養がん細胞へのアポトーシス誘導効果の検討を行う.

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Addition of hydrophobic side chains improve the apoptosis inducibility of the human glyoxalase I inhibitor, TLSC7022021

    • 著者名/発表者名
      Azuma M, Inoue M, Nishida A, Akahane H, Kitajima M, Natani S, Chimori R, Yoshimori A, Mano Y, Uchiro H, Tanuma SI, Takasawa R
    • 雑誌名

      Bioorg Med Chem Lett .

      巻: 40 ページ: 127918

    • DOI

      10.1016/j.bmcl.2021.127918

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Antinociceptive activity of the novel RAGE inhibitor, papaverine, in a mouse model of chronic inflammatory pain2021

    • 著者名/発表者名
      Yoshizawa K, Takeuchi K, Nakamura T, Ukai S, Takahashi Y, Sato A, Takasawa R, Tanuma SI.
    • 雑誌名

      Synapse

      巻: 75 ページ: e22188

    • DOI

      10.1002/syn.22188

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] The Putative Glyoxalase 1 Inhibitor Piceatannol Exhibits Both Anxiolytic-like and Antitumor Effects in Mice2020

    • 著者名/発表者名
      Yoshizawa K, Tabuchi M, Ukai S, Suzuki H, Kawano Y, Takasawa R.
    • 雑誌名

      Anticancer Res.

      巻: 40 ページ: 3271-3276

    • DOI

      10.21873/anticanres.14309

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] High Expression of c-Met, PKCλ and ALDH1A3 Predicts a Poor Prognosis in Late-stage Breast Cancer2020

    • 著者名/発表者名
      Motomura H, Nozaki Y, Onaga C, Ozaki A, Tamori S, Shiina TA, Kanai S, Ohira C, Hara Y, Harada Y, Takasawa R, Hanawa T, Tanuma SI, Mano Y, Sato T, Sato K, Akimoto K.
    • 雑誌名

      Anticancer Res.

      巻: 40 ページ: 35-52

    • DOI

      10.21873/anticanres.13924

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] Glyoxalase I阻害化合物Sulfuretinによるヒト肺がん細胞への細胞死誘導機構の解析2021

    • 著者名/発表者名
      蛭子真衣,栗田叡歩,佐々木梨英,髙澤涼子
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] Caffeic acid phenethyl ester類縁体によるGlyoxalase I阻害の解析2021

    • 著者名/発表者名
      宮崎夏希,中峰佳奈子,高橋実央,吉森篤史,髙澤涼子
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] ステージIII-IV乳癌におけるGLO 1 - PKCλ共発現患者は予後不良である2021

    • 著者名/発表者名
      4.本村瞳,尾﨑綾栞,多森翔馬,翁長朝太郎,野崎優香,和氣由布子,高澤涼子,吉澤一巳,真野泰成,佐藤嗣道,佐々木和教,石黒斉,宮城洋平,長嶋洋治,山本紘司,佐藤圭子,花輪剛久,田沼靖一,大野茂男,秋本和憲
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] 担がんモデルマウスに対するストレスの影響と piceatannolの有用性に関する検討2021

    • 著者名/発表者名
      吉澤一巳,田淵瑞帆,佐藤遥,鵜飼サキ,河野洋平,鈴木秀隆,高澤涼子
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] ステージ III-IV 乳癌における GLO 1 - PKCl 共発現患者は予後不良である Correlation between Glyoxalase 1 and PKCl is predictive of poor clinical outcomes in late-stage breast cancer2020

    • 著者名/発表者名
      椎名瞳,尾崎綾栞,多森翔馬,野崎優香,髙澤涼子,佐々木和教,石黒斉,宮城洋平,長嶋洋治,田沼靖一,大野茂男,秋本和憲
    • 学会等名
      第79回日本癌学会学術集会 The 79th Annual Meeting of the Japanese Cancer Association
    • 国際学会
  • [学会発表] Glyoxalase I 阻害化合物 sulfuretin の培養肺がん細胞への効果の検討2020

    • 著者名/発表者名
      栗田叡歩,蛭子真衣,中峰佳奈子,髙澤涼子
    • 学会等名
      第64回日本薬学会関東支部大会
  • [学会発表] Glyoxalase I と新規阻害剤の複合体の調製と共結晶化2020

    • 著者名/発表者名
      宇佐美碧,髙澤涼子,横山英志
    • 学会等名
      第64回日本薬学会関東支部大会

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公開日: 2021-12-27  

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