研究課題
2020年度までに,piceatannolのin silico予測Glyoxalase (GLO I)結合様式に基づいて構築したファーマコフォアを用いてin silicoスクリーニングを行ったが,残念ながらファーマコフォアを満たす化合物は得られなかった.そこで2021年度は新規に設計することを目指し,ファーマコフォアの精度を高めるために,当研究室で見出した新規GLO I阻害化合物TLSC702およびpiceatannolとGLO Iとの複合体のX線結晶構造解析を行ったところ,TLSC702の結合様式の解明に成功した.Piceatannolについても結晶は取得できたが,結合様式の解析はできなかった.現在,TLSC702とGLO Iの結合様式に基づいて,TLSC702の構造最適化設計および有機合成を行っている.2019年度に新規GLO I阻害化合物として新たに見出したsulfuretinについて研究を進め,sulfuretinによるがん細胞へのアポトーシス誘導に関与するcaspases活性化について,caspase-9 → caspase-3/7活性化すなわちミトコンドリア経路が関与することを明らかにした.2021年度には,高いGLO I阻害活性を示す新規GLO I阻害化合物として新たにLicochalcone Bを見出した.Licochalcone Bは,GLO I阻害剤高感受性細胞であるNCI-H522細胞に,低感受性のNCI-H460細胞よりも有意に高い細胞死誘導能を示した.さらに,Methylglyoxal (MG)スカベンジャーの併用処理によってLicochalcone Bによる細胞生存率低下が有意に抑制されたことから,Licochalcone Bは細胞内でGLO Iを阻害し,MG を蓄積させることによって細胞死を誘導することが示唆された.本研究で,当初の目的であったpiceatannol/GLO Iのin silico予測結合様式に基づいたGLO I阻害化合物の構造最適化は達成できなかったが,TLSC702/GLO I結合様式を明らかにしたこと,新たに数種のGLO I阻害天然有機化合物を発見したことは,新規制がん剤としてのGLO I阻害剤創製に役立つ重要な情報が得られたという点で大変意義深いといえる.
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