研究課題/領域番号 |
19K05738
|
研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
飯田 泰広 神奈川工科大学, 応用バイオ科学部, 教授 (40329305)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 抗真菌 / 先端成長 / C. albicans / ガラクトシダーゼ / S. cerevisiae |
研究実績の概要 |
深在性真菌症は罹患すると重篤化し死亡率が高いため問題となっているが、上市されている抗真菌剤は4種9剤と少なく、新たな薬剤が望まれている。しかし、真菌がヒトと同じ真核生物であるため、選択毒性を得ることが難しく、開発が進んでいないことが現状である。本研究では、真菌が先端成長を行うという特徴に着目し、これを阻害する生理活性物質は成長を抑制し、新たな選択毒性を有する抗真菌薬のシード化合物になると考えている。すでに先端成長に必須なタンパク質の局在を蛍光により可視化することに成功しており、本研究では、それを利用して当該タンパク質の輸送に関わる因子を可視的に評価するスクリーニング系を構築し、先端成長に必須な輸送因子を解明することを目的としている。このような因子を見出すことができれば、それをターゲットとした阻害剤スクリーニングを行うことにより、選択毒性の高い新規抗真菌薬のリード化合物の取得が期待できると考えている。 本年度は、菌糸型に形態を変化させ、真菌症の原因となるC. albicansを用いた先端輸送評価系の開発を試みた。まず、酵母型と真菌型を調整するための培地と培養時間、初期菌濃度などの検討を行った。次に、先端に輸送されることがわかっているBgl2(グルカナーゼ)にGFP(緑色蛍光タンパク質)を融合させたベクター構築を行った。輸送配列が酵母と異なっている点、また、ロイシンの CUG コドンがセリンをコードしているなど独特の配列を有しているため、その最適化を行って目的配列をクローニングした。目的配列をベクターに組み込み、エレクトロポレーション法で形質転換を行い、栄養要求性によるセレクションを行った。得られたコロニーに対して、発現誘導を行い、蛍光観察を行った。 菌糸型への制御、ベクターの構築まではできているが、蛍光観察の結果、局在状況を含め蛍光を観察することができなかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度の予定は、C. albicansを用いた先端輸送評価系の開発であった。ここで、これまで当研究室で先端成長評価を行ってきた出芽酵母のS. cerevisiaeから糸状菌を形成できるC.albicansに移行することが目的であった。 そのために、形質転換は酵母型で行い、1)菌糸型へ誘導してから先端成長の観察と先端部への輸送を評価するための条件を検討すること、2)C. albicansのタンパク質の輸送配列が酵母と異なっている点、また、ほとんどの生物で共通のコドンが一部異なっている(ロイシンの CUG コドンがセリンをコードしている)点の最適化を行ったベクターを開発すること、3)開発したベクターをC. albicansに形質転換して発現評価と先端への輸送・局在の確すること、の3つを具体的な目的としてた。 最初の2つの目的は達成できた(2020年1月上旬)が、肝心な蛍光観察を行ったでは蛍光の観察ができなかった(同2月上旬)。この時点では、形質転換したC. albicansの培養条件や形態(菌糸型、酵母型)、培養時間や誘導条件の検討などほとんど何もしておらず、試しに行った結果である。しかし、新型コロナウイルスの影響により、詳細な観察条件を検討する前に実験を中断せざるを得なくなり現在に至っている。
|
今後の研究の推進方策 |
2019年の目的において、蛍光観察を行えていない。この点に関しては、取り組めていない培養条件や誘導条件の検討を行うとともに、発現観察用に複数のベクターを構築しているので、確認したいと思っています。複数のベクターとは、S.cerevisiaeのBgl2(グルカナーゼ)には輸送配列の他に細胞壁への結合配列が含まれているが、C.albiocansのものには含まれていない。細胞壁に結合する能力が弱いと先端へ局在している時間が短く、培地中に放出されてしまう可能性が考えられる。そのため、当初からこの結合配列を組み込んだものや、輸送配列とGFP(緑色蛍光タンパク質)と結合配列のみでグルカナーゼが含まれていないものなど検討のため、複数のベクターを構築している。それらのベクターの評価が行えていないため、その評価を含め、先端成長評価系の構築を行う。 その後、2020年度当初の目的である先端成長を担う輸送因子の解明に取り組む。具体的には、小胞輸送関連タンパク質のうち、真菌独自のものと機能未知のもの合わせて約60種の遺伝子を対象にsiRNAを作製してその輸送に与える影響の評価を行う予定である。 また、2021年度には当初の予定通り、ヒト培養細胞を用いて先端輸送因子の阻害が生育に与える影響を評価し、選択毒性の得られる新規抗真菌剤開発のためのターゲットの選定を進めていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ当初の計画通りに使用していたが、新型コロナウイルスの影響で研究を途中で中断することになった。 残額は、購入予定であった培地とシャーレの購入に充てる予定である。
|