研究課題/領域番号 |
19K05742
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研究機関 | 熊本保健科学大学 |
研究代表者 |
安楽 健作 熊本保健科学大学, 保健科学部, 准教授 (80389543)
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研究分担者 |
湯本 史明 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任准教授 (30360150) [辞退]
坂本 亜里紗 熊本保健科学大学, 保健科学部, 講師 (70792084)
田辺 幹雄 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 特任准教授 (00716871)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | MAドメイン / カルジオリピン / 抗エイズ薬 |
研究実績の概要 |
本研究は宿主細胞がもつリン脂質であるカルジオリピン(CL)が、HIV-1が所有する構造タンパク質GagのMAドメインに強く結合するという知見をもとに、抗エイズ薬へと展開する新薬創出ストラテジーの提供を目的とする。 2020年度は、2019年度に構築したSurface Plasmon Resonance (SPR)を使用したCLとMAドメインとの定量的結合解析系をもとに哺乳細胞と大腸菌から抽出したそれぞれのMAドメインとカルジオリピン誘導体との詳細な結合解析を実施した。この時、MAドメインとの結合がすでに報告されている他のリン脂質誘導体(ホスファチジルイノシトール2リン酸, PIP2)と解離定数(Kd)を比較することで、HIV-1Gagの細胞内での局在を示唆する知見を得ることができた。一方で、本結合解析において哺乳細胞と大腸菌細胞由来の蛋白質とでは、結合親和性に差異が生じることも分かった。 また、2019年に構築した侵入、放出、および複製を観察できるHIV-1増殖評価系に、始めに天然体と同じ長さの側鎖をもつCLをリポソーム剤形として投与したが、放出には影響せず、侵入および放出過程においても弱い抑制にとどまった。この結果は予想とは反する結果であり、その理由として動物から抽出したCLと人工的に合成したCLとでは、抑制率が異なる可能性が示唆された。 これらの結合解析およびの結果からMAドメインとCLとの結合においては、その結合を仲介する物質(宿主細胞がもつ蛋白質と予想)の存在が予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年に構築した定量的な結合解析系とHIV-1増殖評価系を用いて、結合メカニズムを提唱するとともに、HIV-1増殖評価系においても、放出には影響しないが侵入・複製を一部抑制する結果を得ることができた。 結合メカニズムに基づいて化合物の設計が可能となったこと、HIV-1増殖評価系が機能していることから、創薬への展開の第2ステージに入ることができた。よっておおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年に実施できなかったCL-MAドメイン complexに基づく共結晶構造解析を2021年に実施し、確固たる結合メカニズムを提唱する。結合解析およびHIV-1増殖評価系実験の結果からMAドメインとCLとの結合においては、その結合を仲介する宿主蛋白質の存在が予想されていることから、LC/MS/MSをもとに仲介蛋白質を同定する。これらの結合様式ならびにHIV-1増殖阻害様式に基づきCLの構造をより強くMAドメインに結合するように改変した化合物を設計合成し、創薬への展開を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度に購入すべき試薬類は購入できている。当該助成金は2021年度において必要な試薬の購入を計画する。したがって物品費として計上する。
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