研究課題/領域番号 |
19K05743
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
寺 正行 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (10643512)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | グアニン四重鎖 / ケミカルバイオロジー / 核酸化学 |
研究実績の概要 |
核酸立体構造のひとつグアニン四重鎖(G4)は、その配列モチーフが染色体末端のテロメア、遺伝子プロモーター、mRNAの非翻訳領域に存在し、細胞寿命、転写、翻訳に関わることが示唆されている。しかし、個々のG4を特異的に修飾する方法や選択的に結合するリガンドがなく、G4の生物学的な機能解明やG4構造を利用した新しい遺伝子調節技術への応用が進んでいない。本研究では標的G4を精密に認識し、光照射により可逆的に共有結合を生成する「G4光クロスリンク試薬」の創製に向けて研究を推進している。本年度は、天然有機化合物であるテロメスタチンのアナログである大環状ヘキサオキサゾール(6OTD)を用いて、G4の細胞内局在に関して精査した。6OTDの側鎖部位の活性に影響がない位置にアジド基を導入し、これを生細胞に添加培養した。このアジド基をタグとして、歪みアルキンを有する蛍光分子を作用in situクリック反応が進行し、細胞質にドット状のシグナルを観察することができた。これらのシグナルは、他のG4リガンドと競合させると消失することがわかった。さらに、RNase、DNaseによる消化実験を行ったところ、 RNase処理によってのみシグナルが消失したので、6OTDはRNA G4に対して細胞内で結合することがわかった(論文発表)。このように、RNA由来のG4を培養細胞内において見いだすことができ、mRNAレベルでのタンパク質発現調整が可能となる可能性を見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
G4に選択的かつ強力に結合するリガンドの取得に成功し、さらにこれをin situクリックケミストリーにてRNA G4標的となることを明らかとした。これらの化合物の性質は遺伝子調節試薬として必要であり、これらの情報を取得できたため、概ね順調であると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は標的RNA G4への選択性を高める、あるいは繰り返し配列に効率的に結合することで翻訳阻害を誘導するRNA配列を見出した上で、化合物による遺伝子量の定量評価に移る。また、配列の光クロスリンクも一部検討を開始しているため、この作用点を明らかにしていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大により、大学学生および大学院生の研究活動が著しく制限されたため、物品費の執行ができなかった。さらに、予定していた国内外の学会発表が中止、延期あるいはオンライン開催となったため、旅費などの執行ができなかった。これらの理由により、次年度使用額が生じた。 今年度は、感染症対策を徹底した上で研究活動を可能な限り活発化するとともに、オンラインの機会を通じて国内外の学会発表による研究成果のアピールを行うことで、当初研究計画に則った研究費を執行する。
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