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2019 年度 実施状況報告書

がんのエネルギー代謝スイッチ機構を標的とした小分子阻害剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 19K05744
研究機関国立研究開発法人理化学研究所

研究代表者

川谷 誠  国立研究開発法人理化学研究所, 環境資源科学研究センター, 専任研究員 (50391925)

研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワードがん / 代謝 / 阻害剤
研究実績の概要

がん細胞は、過酷な条件下でも周囲の栄養や環境に応じて代謝を巧みに適応させることで旺盛な増殖を支えている。このような生存のための代謝適応は、がん治療の有望な標的になると考えられるが、エネルギー代謝のスイッチ機構は不明な点が多い。申請者はこれまで、グルコース輸送体のひとつであるグルコーストランスポーター1(GLUT1)を欠損したヒト大腸がんGLUT1-/- DLD1細胞は、野生型細胞に比べ、エネルギー代謝表現型が解糖系から酸化的リン酸化へ大きくシフトしていることを見出した。そこで本研究は、GLUT1-/-細胞を用いてエネルギー代謝のスイッチ機構を明らかにし、それを標的とした小分子阻害剤を開発することを目的とした。本年度は、主にGLUT1-/-細胞の代謝表現型を調べた。
GLUT1-/-細胞は野生型細胞に比べ、グルコース取り込み能は半分程度に低下したが、増殖速度に違いはなかった。また、他のグルコーストランスポーターであるGLUT2、GLUT3およびGLUT4の発現量にも違いはなかった。LC-MS/MSを用いたメタボローム解析で両細胞の細胞内代謝物を比較した結果、GLUT1-/-細胞ではアセチルCoAが顕著に増加しており、TCA回路関連代謝物も総じて増加している傾向がみられた。代謝スイッチに関わる分子や経路を特定するために、両細胞のMSベース定量的プロテオーム解析を行い、タンパク質の発現変化を比較した。その結果、GLUT1-/-細胞では定量値のついた約6,000タンパク質のうち約400タンパク質が有意に増加あるいは減少していた。これらの変動タンパク質を用いてエンリッチメント解析をしたところ、脂肪酸、ピルビン酸、アミノ酸などの代謝に関わるパスウェイが上位にランクした。今後さらにプロテオーム解析を進め、代謝スイッチとの関連を調べていく。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本年度は主にグルコーストランスポーター1(GLUT1)を欠損したヒト大腸がんGLUT1-/- DLD1細胞の代謝表現型解析を計画し、当初の予定通りおおむね順調に進んだ。メタボローム解析やプロテオーム解析等のオミックス解析を駆使して代謝表現型の全体像をつかむことができたが、両解析とも検出限界があったり擬陽性を検出する場合があるので、今後慎重に解析を進めていく必要がある。

今後の研究の推進方策

今後は引き続きGLUT1-/-細胞のエネルギー代謝表現型解析を進める。メタボローム解析やプロテオーム解析のさらなる検討を行い、代謝スイッチに関わる分子や経路の解明を目指す。そして、代謝スイッチに関わる分子や経路が同定されれば、それらを標的とした小分子阻害剤のスクリーニング系を構築する。

次年度使用額が生じた理由

実験用消耗品等にかかる物品費や成果発表にかかる旅費が当初見込んでいた費用を下回ったため、次年度使用が生じた。この残額は、次年度の物品費あるいは旅費として使用する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)

  • [雑誌論文] Identification of a small compound targeting PKM2-regulated signaling using 2D gel electrophoresis-based proteome-wide CETSA2020

    • 著者名/発表者名
      Nagasawa I., Muroi M., Kawatani M., Ohishi T., Ohba SI., Kawada M., and Osada H.
    • 雑誌名

      Cell Chem. Biol.

      巻: 27 ページ: 1-11

    • DOI

      10.1016/j.chembiol.2019.11.010

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Alteration of tooth movement by reveromycin A in OPG KO mice2020

    • 著者名/発表者名
      Minamoto C., Miyazawa K., Tabuchi M., Tanaka H., Mizuno M., Yoshizako M., Torii Y., Tamaoka Y., Asano Y., Kawatani M., Osada H., Maeda H., and Goto S.
    • 雑誌名

      Am. J. Orthod. Dentofacial Orthop.

      巻: 157 ページ: 680-689

    • DOI

      10.1016/j.ajodo.2019.04.037

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structure and biological activity of metarhizin C, a new stereoisomer of BR-050 from a fungus Tolypocladium album RK17-F00072019

    • 著者名/発表者名
      Nogawa T., Kawatani M., Okano A., Futamura Y., Aono H., Shimizu T., Kato N., Kikuchi H., and Osada H.
    • 雑誌名

      J. Antibiot.

      巻: 72 ページ: 996-1000

    • DOI

      10.1038/s41429-019-0229-1

    • 査読あり
  • [学会発表] 2DE-CETSAを用いたPKM2作用化合物NPD10084の標的同定2020

    • 著者名/発表者名
      室井誠、永澤生久子、小川直子、川谷誠、大石智一、大庭俊一、川田学、長田裕之
    • 学会等名
      先端モデル動物支援プラットフォーム成果発表会
  • [学会発表] Analysis of metabolic switch mechanisms using GLUT1 knockout cancer cells2019

    • 著者名/発表者名
      Harumi Aono, Makoto Kawatani, Naoshi Dohmae, Yushi Futamura, Makoto Muroi, and Hiroyuki Osada
    • 学会等名
      第78回日本癌学会学術総会
  • [学会発表] Target identification of bioactive small molecules based on proteomic analyses using 2-D DIGE2019

    • 著者名/発表者名
      Makoto Muroi, Ikuko Nagasawa, Naoko Ogawa, Harumi Aono, Yushi Futamura, Makoto Kawatani, and Hiroyuki Osada
    • 学会等名
      RIKEN-Max Planck Joint Research Center 7th Symposium
    • 国際学会
  • [学会発表] 代謝作用化合物解析に向けたChemProteoBaseの高度化2019

    • 著者名/発表者名
      室井誠、二村友史、永澤生久子、川谷誠、青野晴美、小川直子、長田裕之
    • 学会等名
      新学術領域研究「化学コミュニケーションのフロンティア」第5回公開シンポジウム
  • [学会発表] がん代謝阻害剤のスクリーニングとその分子標的同定2019

    • 著者名/発表者名
      長田裕之、川谷誠
    • 学会等名
      第23回日本がん分子標的治療学会学術集会
  • [学会発表] GLUT1欠損がん細胞を用いたエネルギー代謝スイッチ機構の解析2019

    • 著者名/発表者名
      川谷誠、青野晴美、堂前直、二村友史、室井誠、長田裕之
    • 学会等名
      第23回日本がん分子標的治療学会学術集会

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公開日: 2021-01-27  

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