研究課題/領域番号 |
19K05753
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
小林 佑理子 岐阜大学, 応用生物科学部, 准教授 (40610952)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アルミニウム耐性 / ゲノムワイド関連解析 / 酸性土壌 / シロイヌナズナ / シグナル伝達 / 転写因子 / 発現量多型 |
研究実績の概要 |
酸性問題土壌では可溶化するアルミニウム(Al)が植物の生育を著しく阻害するため、植物のAl耐性改良は生産性向上への貢献が期待される。Al耐性は複数の遺伝子が支配する複合形質であり、それら複数遺伝子の発現制御は育種上重要となる。しかしその発現制御機構であるAl感知や転写活性化機構は未解明な部分が多い。そこで、本研究では、Al耐性と発現相関がある遺伝子に関し、転写活性化を担うストレス受容やシグナル伝達および転写因子を同定することを目的とした。 本年度は、有機酸トランスポーター遺伝子など主要Al耐性遺伝子および、シロイヌナズナ野生株多系統のAl耐性と発現相関がある遺伝子について、遺伝子発現量と全ゲノム多型の関連解析(ゲノムワイドアソシエーション解析:GWAS)による発現制御遺伝子の同定と発現制御の解析を試みた。その結果、複数の主要なAl耐性遺伝子の発現制御に関与するシス因子に加え転写因子などの複数の上流因子を新規に特定した。また、それら遺伝子の機能解析を実施中であり、これらの機能解析を進めることで、新たなAlストレスシグナル伝達の解明につながる。 一方、先行して実施したケミカルスクリーニング、Al耐性に関するGWAS、系統間比較トランスクリプトーム解析等から得られた候補遺伝子から、シグナル伝達に関与すると考えられる受容体様タンパク質やタンパク質修飾酵素および転写因子などをコードする候補遺伝子に関して機能欠損株の表現型解析の準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Al耐性遺伝子の発現量GWASから、発現制御に関与する複数の遺伝子を新規に特定した。現在それらに関する論文を1報発表、2報投稿中、1報投稿準備中である。ただし、その他の機能欠損株や過剰発現遺伝子組換え体の準備がやや遅れている。一方で、新規に獲得した変異体の解析をすすめており、全体としてはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
Al耐性遺伝子の発現制御に関与していた遺伝子群の機能解析を進めるとともに、新規変異体や候補遺伝子の機能欠損株の解析から、そのほかの制御遺伝子の同定を行う。さらに、多系統のAl耐性と発現相関がある遺伝子群のネットワーク解析とシス配列推定による転写因子の同定についても進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
変異体の次世代シーケンサーによるゲノム解読の準備が年度内に間に合わなかったため、解析費用が次年度に繰り越しとなった。また、それに伴う遺伝子同定解析のためのシロイヌナズナ種子購入が遅れたためその予算も次年度に繰り越しとなった。次年度直ぐにNGS解析を終え、COVID-19の影響の程度にもよるがストックセンターから種子購入を済ませる予定である。
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