世界の耕作地に分布する酸性不良土壌では、主に酸性で可溶化するアルミニウム(Al)が植物の生育を著しく阻害する。そのため、中和石灰などの大量の施肥により植物生産が行われている。したがって、植物のAl耐性改良は低資源、低エネルギー投入での生産性向上に貢献できると考えられる。Al耐性は複数の遺伝子に制御されているが、それらの発現制御調節は育種上有用であると考えられる。そこで本研究では、Alストレスシグナル感知やシグナル伝達を介した転写活性化機構を明らかにすることを目的とした。 シロイヌナズナにおいて、Al耐性遺伝子である、ポリガラクツロナーゼ阻害タンパクをコードするPGIP1遺伝子の発現量ゲノムワイド関連解析を行った。その結果、リン脂質シグナルや一酸化窒素(NO)シグナル系の下流で働く転写因子やシグナル伝達系因子を同定した。それらの発現量多型はAl耐性と相関を示した。 それら遺伝子群は地上部では機能するが、地下部では同じ制御系には含まれなかった。また、PGIP1を含め、それらの調節遺伝子の破壊株は、短期間の根生育よりも長期間の地上部生育においてAl感受性を示し、Al耐性に寄与していることが示された。一方、PGIP1は他の植物のトランススクリプトーム解析においてシロイヌナズナと同様にSTOP1制御を受けていたことから同様な制御系が存在すると考えられた。 また、新規Alシグナル変異体の原因遺伝子の候補遺伝子群の網羅的な解析を実施した。
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