研究課題
ストリゴラクトンは植物の根から分泌され、土壌根圏では、根寄生植物の寄生およびアーバスキュラー菌根(AM)菌の共生を制御するシグナル物質である。一方植物体内では、植物の地上部枝分かれを抑制する新奇植物ホルモンとして作用する。さらに、根の形態形成、二次成長、葉の老化促進など、植物の生長・分化に深く関与していることが次々と報告され、ストリゴラクトンを農業生産に利用する研究の重要性が高まっている。しかしストリゴラクトンは、化学的に不安定で壊れやすく、植物の生産・分泌量が微量であるため、その生合成経路、生合成・調節メカニズムの詳細については不明な点が多い。また植物ホルモンとしての活性本体も特定されていない。本研究では、モデル植物のシロイヌナズナのストリゴラクトン生合成を促進する条件を見出し、シロイヌナズナにおけるストリゴラクトン生合成調節メカニズムの解明を目指すことを目的として進めてきた。これまでに、シロイヌナズナの野生型(Col-0)において、養分欠乏のうち特に窒素欠乏がストリゴラクトン生合成遺伝子の発現を顕著に促進し、Atd14変異体においては、地上部基部および地下部でcarlactoneおよびmethyl carlactoneが窒素欠乏によって蓄積することを明らかにした。窒素欠乏が強くなるほど、これらのストリゴラクトンの内生量は増加していた。さらに、ストリゴラクトン生合成経路の中間に位置するMAX1の発現が、地上部基部や地下部で、1日のうち(朝、昼、夕方)、朝に最も顕著に高まることが確認された。すなわち、シロイヌナズナを用いてストリゴラクトン定量解析を行いたい場合は、窒素欠乏条件下で培養し、朝(明条件開始3時間以内)サンプリングを行うことが安定的にストリゴラクトンを検出する条件であることが示唆された。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 4件)
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