研究課題/領域番号 |
19K05758
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
深尾 陽一朗 立命館大学, 生命科学部, 准教授 (80432590)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ペプチド / 亜鉛欠乏 / シロイヌナズナ / 受容体 |
研究実績の概要 |
本研究では、シロイヌナズナの根において亜鉛欠乏特異的に発現量が上昇するシステインリッチ型の分泌ペプチドに着目し、ペプチドと相互作用する受容体タンパク質の探索と、その機能解析を目的とする。研究対象とするペプチドは、亜鉛欠乏時にmRNAおよびタンパク質発現が上昇し、他のミネラル欠乏には応答しない特徴をもつ。またシグナルペプチドが切断された成熟型ペプチドはシステイン6~8箇所の位置が高度に保存されており、7種類のペプチドがファミリーを構成している。このうち3種類のペプチドは、質量分析計で同定されるほど発現量が多いが、論文等での報告がない機能未知ペプチドである。そこで、これらペプチドの機能を調べる目的で変異体の取得や過剰発現体を用いた表現型解析を行ったが明確な表現型が得られなかった。しかし、予想に反して二重変異体は亜鉛欠乏耐性を示した。さらに、亜鉛欠乏以外の元素欠乏や亜鉛十分条件においても根が長くなる表現型を示した。この表現型の原因を調べたところ、根の細胞長が長くなることで根が野生型Col-0よりも伸長するなど生育が良くなる事が明らかとなった。一方、これらペプチドのプロモータ領域にはZDREモチーフが存在する。ZDREモチーフは亜鉛輸送体などのプロモータ領域に存在することが知られており、転写因子bZIP19やbZIP23が結合して遺伝子発現を制御することが知られている。これら転写因子の変異体を用いた解析からは、解析し対象とするP2およびP4ペプチドは亜鉛欠乏時にbZIP19によって制御されることも示されており、どのような環境下で機能するペプチドであるかは、まだ判明してない。また相互作用タンパク質の同定には至っていないことから、亜鉛欠乏に応答して発現量が上昇するロイシンリッチリピート型受容体キナーゼなどの遺伝子に着目し、その変異体を取り寄せてホモラインの固定を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究対象とするP2およびP4ペプチドについて固定したシロイヌナズナT-DNA挿入変異体のホモラインおよび作成した過剰発現体は、明確な表現型を示さない。そこで、P2およびP4ペプチドの二重変異体を作成したところ、亜鉛欠乏時に野生型Col-0よりも生育が良くなる表現型解析を示した。この原因を調べるために、根の伸長領域を顕微鏡観察したところ、Col-0と比較して二重変異体の細胞数は変化しないが、細胞の長さが有意に長くなることが判明した。また元素解析からは、二重変異体において亜鉛濃度が変化しないことを確認している。さらに二重変異体は、亜鉛欠乏だけではなく、通常の生育条件、亜鉛十分条件、マグネシウムやマンガンなどの他の元素欠乏下においてもCol-0よりも生育が良くなる表現型を示したことから、亜鉛欠乏特異的に機能するペプチドではない可能性がある。一方で、転写因子bZIP19およびbZIP23のT-DNA挿入変異体を用いたP2およびP4ペプチドのリアルタイムPCRを実施したところ、Col-0では亜鉛欠乏時に発現量が上昇するが、bzip19変異体では発現量が上昇しないことが示された。つまり、これらのペプチドは亜鉛欠乏時に機能するbZIP19に発現制御されていることから、亜鉛欠乏とペプチドの機能的な関係性が完全に否定されたわけではない。さらに、これらペプチドの相互作用タンパク質を同定するために免疫沈降実験を行ったが、ペプチド自身が同定されておらず、相互作用タンパク質の同定には至っていない。さらに、ペプチド合成に取り組んだが、現在のところ合成には至っていない。この他、残り5種類のペプチドについては、T-DNA挿入変異体が得られたもののホモラインを固定し、さらにゲノム編集により機能欠損させることで多重変異体の作成を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
P2およびP4ペプチドの二重変異体は、根が長くなる表現型を示したことから、P2およびP4ペプチドの自己プロモータまたは過剰発現させるための35Sプロモータに制御されたP2およびP4ペプチドのゲノム配列[native promoter (or 35S promoter):peptide]、またはP2およびP4ペプチドのゲノム配列の下流にGFPを連結させたDNA配列[native promoter (or 35S promoter):peptide-GFP]をクローニングし、二重変異体に導入した。現在T1種子が得られていることから、2020年度中に相補ラインを獲得し、二重変異体の表現型が相補されるかを調べる。また免疫沈降実験では、これらペプチドと相互作用するタンパク質の同定には至っていないことから、我々が実施したNGS解析データから、亜鉛欠乏に応答するロイシンリッチリピート型受容体キナーゼなどの受容体を選抜し、変異体を取得した。現在これらのホモラインの固定を行っている。そこで、これら変異体が亜鉛欠乏感受性や耐性を示すかを調べ、表現型が見られた変異体の原因となるタンパク質について、native promoter (or 35S promoter):peptide-GFP 形質転換体における受容体とRFPの融合タンパク質発現や、受容体-FLAGタグラインなどの作成により相互作用タンパク質の同定を行う。また、実験がうまく行かない場合は、P2およびP4ペプチドと相互作用するかを酵母ツーハイブリッドなどにより確認することも計画する。ペプチド合成については、P2およびP4ペプチドの全長がおよそ50アミノ酸あることから、人工合成することは困難である可能性が考えられるため、大腸菌で発現させた後に精製する方法を検討し、精製された場合はシロイヌナズナに投与して表現型の確認を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、すでに取得していた変異体および作成に取りかかっていた形質転換体を用いた解析を実施しており、これらの解析を行うための試薬および消耗品を新たに購入せずに実施することができた。一部必要となった消耗品などの経費については、学内資金を使用することで実施した。また、今年度に準備できた実験ツールを用いて研究を加速させるために、来年度は半年間研究員を雇用することを計画している。以上の理由から次年度使用額が生じた。次年度は、研究員の雇用の他に、実験に必要な消耗品を購入して実験を進める予定である。
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